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『ある殺人者の話』4/4

「『ある殺人者の話』3/4」の続き
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?160-2

522 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:39:46 ID:hm94iRWQ0
家についた時にはもう痛みは感じなかった。
ある感情だけが私の体を満たしていた。
やられた。またやられた。あいつに。
悔しい。悔しい。悔しい。
次こそは。
何度も呟きながら、私は包丁を手に持ちベットに向かって刺した。
何度も。何度も。何度も。

私の部屋に人影がいるのが見えたような気がした。
誰だ。あいつか。あいつだといい。
私はその人影に飛び掛ろうとした時、私の体が固まった。
その人影は健二ではなかった。
彼女が泣きながら私を見つめていた。
彼女の視線から逃げるように部屋を見渡す。
ベットからは綿が飛び出していて、その綿は赤く染まっていた。
刺しすぎて自分の手を切ったんだろう。
私は手にしていたものを床に落とした。
涙が止まらなかった。
自分ではない誰かが私を乗っ取っている。
何が私を変えたのだろう。
彼女はぎゅっと抱きしめてくれた。
暖かかった。ずっとずっと泣きながら抱きしめてくれた。
私の中の殺人者が消えたような気がした。


523 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:41:26 ID:hm94iRWQ0
凶器になりそうな物は彼女が処理した。
外に出る時はかならず彼女がついてきた。

私は変わらない風景を見たくなかったので外に出る。
平凡な風景を見ながら、私は何かを探すようにただひたすら歩いた。
彼女は何も言わずついてきた。

夜になり風が冷たくなってきた。
私と彼女は歩道橋の上を歩いていた。
向こうから人影がやってきていた。
彼女が私の手を引き、「はやく逃げよ」と言っていた。
私は意味が分からなかった。
何を恐れているのか。
その瞬間、肩に熱い物が入ってきた。
私は倒れた。
ナイフが刺さっていた。
痛みは感じなかった。
私の殺人者が目覚めたような気がした。


525 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:49:00 ID:hm94iRWQ0
ナイフを私に刺した人物が言った。
「殺人者は簡単には死なせてはいけないよね。苦しんで死ななきゃ。
 昨日夢を見たんだ。母さんと咲弥が出てきたんだ。
 教えてくれたよ。母さんと咲弥はトラックに引かれて死んだ。
 お前もトラックに引かれて死ぬべきだよね」
何か熱い物が私の体を満たしていった。
殺人者は肩に刺さっているナイフを引き抜く。
やっとか。やっとこの時がきたのか。
殺人者は健二の首を片手で掴んだ。
何処に刺そうかと悩んだ。
健二は必死に殺人者の腕をつかみ抵抗していた。
殺人者は首元に狙いをつける。
夢みたいに赤く染まるのか。
次は何処に刺そうか。
健二に向かってナイフを突き刺そうとした。
彼女が私の体にしがみつきそれを邪魔した。
やっと終わるのに。なんで邪魔するんだろう。
体の力が抜け、ナイフが地面に落ちた。
殺人者はいなくなっていた。


526 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:51:30 ID:hm94iRWQ0
健二は私にしがみつく彼女を突き飛ばし、私を持ち上げ壁に押し付けた。
もう駄目。死ぬ。今助かっても、いつあいつがまた現れるかわからない。
私は目をつぶり、抵抗するのを止めた。
車が通る音が何度も聞こえる。
彼女にお礼を言いたかった。そう思いながら死を待った。

歩道橋の上から下を見た。
人が群がっていて、その視線はみな同じ方を見ていた。
道路が赤い血で染まっていた。
私は病院で、警官に今日のことを話した。
「たぶん正当防衛が認められると思う。目撃者もいるし、心配することはないと思うよ」
そう言い、警官は出て行った。
私が健二を突き落としたのだろうか。
あの場には私と彼女と健二しかいなかった。
彼女は突き飛ばされてから、あの場所を動いていなかったと思う。
私がやったのか…。
無意識のうちにあいつが出てきてやったのか。


527 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:54:16 ID:hm94iRWQ0
終身刑にでもしてもらい、私の時間を終わらせてほしかった。
一人残った健二の父親は、私を恨んでいるだろう。
私がいなければ家族は幸せだったろう。
私は健二の父親の家に行くことにした。
殺してもらう事に期待を寄せて。

健二の父親は期待を裏切った。
私に何度も謝罪し、私でよければどんな罰でも受けます。
そんなことを言っていたと思う。
期待に裏切られたことがショックだった。

最後に、彼女の様子も見に行くことにした。
彼女は眠っていた。昨日病院に運ばれてから、ずっと眠っていたと思う。
部屋にいるのは二人だけだった。
「ありがとう」
部屋を出ようとしたとき、手を引かれた。
彼女は先ほどと表情を変えず眠っていた。
私はまだ生きていたいと思っていた。


529 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:59:51 ID:hm94iRWQ0
数ヶ月が過ぎ、女の子の命日の日に、私はある家を訪れた。
「せっかく来てくれたんだ。出前をとったから良かったら食べて行って」
健二の父親は、手を合わせていた私に向かって言った。
はやく済ませて帰ろうと思ったのだが、せっかくなので食べていくことにした。

いろいろと話していたら、いつの間にか午前0時になっていた。
「今日は時間がたつのが早いね。良かったら今日泊まって行って」
私は何故か帰りたくなかったので、その言葉はありがたかった。

その夜夢を見た。
あたり一面に花が咲いている場所に私はいた。
丘の上に四人の人影が見えた。
呼んでいる気がしたので、私は丘へと向かった。
丘には仲に良い家族がいた。
一人の男の子が私に向かってきた。
男の子の顔は笑っていた。
あの事件がなかったら、きっと楽しい時間を過ごしていただろう。
悲しい気持ちになった。
私がこの子の時間を奪った。
ツインテールの似合う女の子が私に向かってきた。
女の子も笑っていた。
この笑顔を見たら、さっきまでの悲しい気持ちは何処かに消えていた。
女の子は私の手を握ってた。
家族はみんな笑っていた。
女の子の手はとても暖かかった。


530 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 19:01:26 ID:hm94iRWQ0
昨日の夢は、自分の都合の良い妄想のような気がした。
見た気もするし見なかった気もする。

朝食もごちそうになることになった。
「昨日不思議な夢を見たよ」
私は夢の内容を聞かなかった。

「いろいろとありがとうございました」
「こっちこそありがとう」
「あの…迷惑じゃなければ、来年も来ていいですか?」
「君からそう言ってもらえて嬉しいよ。私はいつでも歓迎するよ。是非来年も来てね」
私は家を出た。

またあの夢を見たかった。
自分で都合の良いように作ってできた夢かもしれないけど、また夢を見たかった。
来年は彼女も連れてこよう。きっとあの子も喜ぶ。
走って家に帰った。


542 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 20:31:37 ID:hm94iRWQ0
私は走って帰った。夢を見て浮かれていたのか。
何故か早く家に帰りたかった。

家についたら、留守電が1件入っていた。
留守電を聞いた。声が聞こえる。
その声が何を言っているか、その時にはよくわからなかった。

病院につき、彼女の両親から何が起こったのか聞いた。
車で運転していた彼女に軽自動車がぶつかってきて、いま手術中だと言った。

数時間が過ぎ、手術室から彼女が乗せられた台を引く看護士と医者が出てきた。
彼女には足が無かった。涙が出なかった。
私は病院のトイレに行き、顔を洗って鏡を見た。
「おはよう。殺人者」

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