死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?161
855 :添い寝:2007/03/29(木) 15:30:36 ID:RJO9BJ3Y0
ある新興住宅地で起こった出来事です。
そこはバブル期初期に計画ができ、既存の鉄道路線に新駅を作り、広大な農地を住宅地へと造りかえて、
駅の近辺には、高層マンションやショッピングモールなどできるはずでした。
しかし、そのうちバブルもはじけてしまい、新駅を中心に住宅こそそれなりに造られたものの、
高層マンションやショッピングモールなどは建設が中止になってため、
住宅地と住宅地の間に農地や空き地が所々に見られる、ちぐはぐな街となってしまいました。
小学校以来の仲で、今は不動産業を営んでいるやつがいるんだけど、
仮にそいつをアキバ(アキバ氏)としておく。
で、そいつに飲みに誘われたとき、その席で言われた。
「うちで分譲した新Q地区の区画なんだけど、そこの建売買った人やその家族が相次いで死んでるんだよね。
数日前にも一人死んだ」
新Q地区とは、この住宅地がある場所で、Q町の新街区だからこう呼んでいる。
どんなような死に方をしているかと言えば、アキバいわく、
「分譲が全部終わって、一年かそのくらいは何ともなかったんだけど、
それから事故死、病死で2人が立て続けに死んだ。
それからさらにひと月ほどして、4人まとめて自動車事故で一家全滅。
まあ、このくらいなら偶然とも取れなくはないんだけど、
その後三月足らずの間に、更に2人が事故や病気で死んでいる。
病死の中にはそれなりの年齢の人もいたけど、異常だろ?」
約30軒のうち半分近くが、わずか半年足らずの間に葬式を出しているという。確かに異常。
856 :添い寝:2007/03/29(木) 15:31:23 ID:RJO9BJ3Y0
「今では『何かの祟りじゃないか』と、その区画の人は全員といってもいいくらい怯えている。
クレームも多くなってきてね。
で、何やら怪しげな話が好きなお前に、相談しようと思ったわけだ」
確かに俺は怖い話は好きだけど、霊が分かるわけじゃないし、ましてやお祓いや除霊の類はできない。
でも興味があったから、一応一通りのことは聞いてみた。
「その分譲地に、何か曰くはなかったのか?」
「詳しくは分からないが、無かったと思う」
「地鎮祭はやったのか?」
「もちろんやった」
「そのとき神主は何も言わなかったのか?」
「その場にいなかったので分からない」
「死亡が相次いでいるのはそこの区画だけなのか」
「その通り」
「前の地主は何も言っていなかったのか」
「俺は特に何も聞いていない」
「亡くなった人の共通性は?」
「今は分からない」
「おまえの親父さんが亡くなったのは偶然か?」
「それは全く分からない」
アキバの親父さんは、1年ちょっと前に癌で亡くなっている。
まだ60歳前で、現代なら十分若死の部類に入るだろう。
その区画を分譲したのは、まだ親父さんが社長をやっているときで、分譲が終わってから程なくして亡くなった。
それまでは普通だったが、ある日突然立てなくなり、病院に行ったところ頭に大きな腫瘍が発見され、
その後三月と持たずに亡くなってしまった。
既に癌が体中に広がっていたのだという。
もちろん俺も葬式には参列している。
その後、親父さんの後を継いだのが彼であるが、
その区画を分譲しているときは他の物件を扱っていて、そのときの様子はよく分からないのだそうだ。
857 :添い寝:2007/03/29(木) 15:32:36 ID:RJO9BJ3Y0
「俺よりも、地鎮祭をやった神主に相談したほうがよっぽど頼りになるんじゃないか」と言ったが、
「その神主、死んでしまっている」
「なんだそりゃ」と思わず突っ込んだが、冷静に考えるとかなり怖い。
「でも神主、かなりの歳だったからな。
それで、うちが檀家になっている寺に頼もうかと思ったんだけど、
そこの住職、どうも胡散臭いし、俺とも折が会わなくてね。誰かお祓いできる人知らないか?」
「『自称』霊能者ってやつは俺も知っているんだけど、そいつもかなり胡散臭くてね…」
「それでもいい、紹介してくれ」
そんなやりとりがあって、『自称』霊能者である人間を紹介することに。(彼を仮に『オオツカ氏』とします)
そして数日後、アキバ、俺、オオツカ氏の3人で現地へ。
到着して界隈を一通り歩いたあと、オオツカ氏が言う。
「確かに何か感じます。しかし、何か違うというか、何かおかしいというか…」
やっぱり、こいつ怪しいなと思う。
誰だってそのくらいのこと言えるだろ、と心で突っ込みを入れてアキバの顔を見ると、
彼も胡散臭いものを見ているような目つきをしている。
「対処できそうですか?」
アキバが恐る恐る聞く。
「うーん…」と首をひねったあと、オオツカ氏は「無理そうです」と一言。
まあね、できないのにやった振りをしちゃうよりは良心的かな、と思ったりする。
しかし、それからオオツカ氏は、ある人物を紹介してくれた。
その人物は近くの市に住む50代の女性で、オオツカ氏とは長い付き合いとのことだった。
ただ、その人に会う前にまた死者がでた。
ある家の高校生の息子が、急性アルコール中毒で死んだ。
引越しを検討している一家も少なくないとの噂もでてきた。
858 :添い寝:2007/03/29(木) 15:33:38 ID:RJO9BJ3Y0
さらに数日後、その女性(ウエノさんとします)を含め4人で再び現地へ。
件の区画を歩いたあと、「近くの土地も見てみましょう」と、区画から外へ足を向ける。
あいにくの小雨模様だったが、傘もささずに早足で歩きだした。後を追う。
ウエノさんは隣の区画を回ったあと、今度は反対に向かった。
そこにはとても小さな公園があり、その向こうは荒地となっている。
さらにその荒地に隣接して、また別の区画があった。
荒地の前まできて、ウエノさんは足を止めた。
「ここみたいだね」
「ここ、ですか?」
アキバが怪訝な顔で聞く。
「そうよ。ここがおかしい。あなたも何か感じる?」
振られたオオツカ氏も、「確かに感じますね」と呟く。相変わらず胡散臭い感じではあったが。
「しかし、ここが原因ならば、
あそこの区画より、ここにすぐ隣接している場所のほうに影響がでるのではないですか?」と俺が聞く。
「まあ、そうなんですが。そこは私もおかしいと思ってます。調べる必要がありそうですね」
「この土地の持ち主はわかりますか?」
ウエノさんがアキバに聞く。
「調べれば分かるとは思いますが」
「至急調べて、地主を見つけてください」
「分かりました。で、不躾ですが、対処はできますでしょうか?」
「まずは、ここの因果関係が分からないと何とも言えませんね。それを知るためにも地主さんに話が聞きたいのです」
職業柄、土地の所有者を探すのは不動産屋にとってはお手の物。
その日のうちに地主を割り出したが、その地主、今は隣県に住んでいるという。
さっそくアポをとってみたところ、日曜日なら会えそうだとのこと。
早速日曜日に地主宅を伺った。
地主は還暦を過ぎたばかりの男性であった。(地主をカンダ氏とします)
もっとも、俺は仕事のため行けず、ウエノさんとアキバの2人で行った。
後から聞いたことはこんなことだった。
859 :添い寝:2007/03/29(木) 15:34:42 ID:RJO9BJ3Y0
簡単な挨拶の後、ウエノさんが用件を切り出す。
「新Q地区に、カンダさんが所有している土地についてのことなんですが」
「はあ」
「それで、あの土地についてご存知のことを教えて欲しいのです」
「いや、私はただ土地を持っているだけですが」
最初カンダ氏は、不信感、敵対心がありありだったという。
もっとも、見ず知らずの人間が尋ねてきて、いきなり土地のことを聞けば無理はないのかもしれない。
さらに少しやりとりがあったあと、ウエノさんが努めて穏やかに言った。
「私どもは、カンダさんに金銭的なことを含めて何か要求したり、責任を追及する気はありません。
ただ、俄かには信じられないかもしれませんが、あの土地が原因で人の命が奪われている可能性があります。
ですから何でもいいので、昔からの謂れを知っていたら教えて欲しいのです。
決してそれを悪用したり、むやみに人に漏らしたりはしないとお約束しますので。どうかお願いします」
そのとき、ひとりの老婆が部屋に入ってきた。
カンダ氏のお袋さんである。80を優に超えてはいるが、しっかりした人である。
「その子(カンダ氏)はあまり知らないから、私がお話しましょう」
「是非お願いします」
「あそこは忌み地なんですよ」
カンダ婆さんはそう話し始めた。
まとめると、次のようなことである。
いつの時代かははっきりしないが、かなりの昔から、
その土地に『不幸な出来事』に関連するもの、『穢れた』ものなどを捨てる(埋める?)ようになった。
それは物質的なものだけではなく、気持ち的なもの、所謂『怨念』や『憎悪』などを、代々捨ててきたという。
ただし、カンダ婆さんがカンダ家に嫁にくる頃には、その風習はほとんど廃れており、
実際にどのようにやっていたかは分からない。
しかし、舅や旦那(亡くなっている)から概要を聞かされており、
そこには無闇に入ってはならないこと、また、子供を近づけてはならないなどと注意を受けていた。
そして、その土地を『ごうち』と呼んでいた。
なぜ『ごうち』と呼ぶのか、また、どんな漢字があてはまるのかは分からない。
860 :添い寝:2007/03/29(木) 15:35:53 ID:RJO9BJ3Y0
その土地はカンダ家の所有ではあるが、管理は集落で行っていて、そういったことは集落全体で共有していた。
ただ風習はなくなっても、『ごうち』は集落の主に年寄りたちによって管理されつづけ、
その集落一帯が新Q地区となって再開発されるまで行われていた。
もともとカンダ家は集落一の地主であったのだが、農地解放で落ちぶれた。
ただし落ちぶれたとはいっても、かなりの土地は残り、バブルと再開発の影響で土地は高騰、
しかし、土地を手放すことに抵抗していたカンダ婆さんの旦那(カンダ家先代)が亡くなると、
カンダ氏は土地を売り、それを元手に事業に手を出した。
そのうちバブルも崩壊して、事業もだめになり、今はここにいる。
『ごうち』であるが、そこだけはカンダ婆さんが売却にはかなりの難色を示し、
周辺の家々からも売らないでくれと懇願されたので、そこと周辺の一部はわずかな土地ではあるし残した。
「そう言われてみれば」とカンダ氏も言った。
「そう言われてみれば、子供のころは『ごうち』の周りにあった雑木林で遊んだときは、親父に酷く怒られたっけ。
あと、『ごうち』の端を流れる水路でも絶対に遊ぶなと、何度も言われたな…」
「心配だったんですよ」と、カンダ婆さんは話の最後に呟いた。
ウエノさんは帰りの車の中で、
「私にはちょっと手に負えないかも。アキバさん今日はお時間取れます?」と聞いてきた。
アキバは大丈夫だと答える。
「それならW市に行って欲しいのですが」
W市とは、Q町近辺の市町の中心的役割を果たす市である。
丁度よいことに、カンダ氏宅からQ町に戻る途中に通ることもあり、寄り道するには好都合だった。
ウエノさんからW市で紹介されたのは、オオサキ氏という男性であった。
ちなみに、次から次へと霊能者を紹介されて、ぼられるんじゃないかとアキバは心配したそうだが、
そのときに、ウエノさんとオオサキ氏からきちんと説明を受けて、安心したとのことだ。
「『ごうち』2/2」に続く
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