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『ある殺人者の話』3/4

「『ある殺人者の話』2/4」の続き
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?160-2

368 :ある殺人者の話:2007/03/16(金) 21:03:38 ID:/kFs1Ack0
三時間はトイレにいたと思う。
トイレから出て玄関を見る。思った通り黒い封筒が落ちていた。

1/4
僕は今日は殺人者に会える気がした。
夢に咲弥と母さんが出てきたからだ。
悲しそうな顔をしていた。
はやく幸せにしてあげたい。

2/4
咲弥と母さんの予想通り殺人者の家に行ったら殺人者に会えた。
咲弥と母さんが会わせてくれたんだ。
殺人者は逃げた。
せっかく会えたのに。
幸せになりたくないのか。
不幸せが好きなのか。

3/4
僕は階段をのぼった。
殺人者に幸せを与えるために。
咲弥に幸せを与えるために。
母さんに幸せを与えるために。
父さんに幸せを与えるために。
みんなに幸せを与えるために。

4/4
殺人者は僕に会ってはくれなかった。
僕は悲しくはなかった。
またすぐ会える。
家族が僕の味方をしてくれる。


369 :ある殺人者の話:2007/03/16(金) 21:05:10 ID:/kFs1Ack0
私は警察に電話をした。
予想通りの回答が返ってきた。
『よくあるいたずらじゃないですか?』
「いたずらじゃありません!手紙もちゃんとあるし扉にナイフで叩かれた跡があると思います!
 すぐ逮捕してください!」
『よくあるんですよ。一人暮らしでかまってほしくて、自作自演する人が。
 こんなことするなら、ボランティアにでも行って、少しは人の役に立つことをしないさい』
そう言われて私は電話を切った。
自分でやるしかないな。自分であいつを。
気がついたら台所にある包丁を見ていた。
手を包丁から離す。私は何をやろうとしているのか。
殺人者になるくらいなら私はいっそ死にたい。
でも本能がそうは言ってない。
自分の体を赤く染めたいと思っているに違いない。
あの夢のようにあいつを…。


397 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 01:19:47 ID:hm94iRWQ0
朝、目が覚め、洗面所に行き顔を洗った。
鏡に写る自分の姿を見てみた。
一瞬、私の顔じゃないものが見えたような気がした。
私の顔だけど私の顔じゃない。
冷酷で暖かさをまったくもたない顔。

大学でかばんを開けたら、台所にあるはずの包丁が入っていた。
いつ入れたんだろう。周りにばれないように、そっとかばんの奥にしまった。
何かに操られているかのような感覚がした。

その日は真っ直ぐ家に帰る気がしなかったので、気分転換に電車に乗りぶらぶらと歩き回った。
結局何も目的がないので、すぐに帰りの電車に乗った。

降りる駅が近くなったので、出口に向かい電車の扉が開くのを待つ。
電車が止まり扉が開いた。
ドンッ
私に人が何かぶつかった。
「あっ、すいません」
私はそう言い振り返ったが誰もいなかった。
電車から降りて何か異変に気づいた。
周囲の人が私を見ている気がした。
私はそんな視線を気にもせず、地面に向かって足を出す。
地面が反転したような気がした。


518 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:26:40 ID:hm94iRWQ0
気づいたら辺りは真っ白だった。
体を起こし辺りを観察する。
「病院…?」
なんでこんな所にいるのだろうと思っていた時、看護士が入ってきた。

簡単な検査が終わり、何が起こったのか看護士さんに聞こうと思った時、ほっそりとした人が入ってきた。
看護士は部屋から出て行き、部屋には二人だけになった。
その男は刑事だと言って、私に起こったことを説明してくれた。
電車を降りた時、ナイフで刺されたみたいだった。
2週間は入院が必要と言われた。
麻酔が効いてるのか、痛みは一切感じられなかった。
「何か心当たりはあるか?」などと聞いてきたような気がする。
「通り魔だと思います」
私を刺したのはあいつだと確信している。
私はあいつには捕まってほしくなかった。
この手にかけるまで。


519 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:30:12 ID:hm94iRWQ0
2週間はあっという間だった。
入院していた時、いろんな人が私を訪れ、何か言っていたような気がする。
私は何も答えず、ただ一点を見つめていたと思う。

家に向かった。
あるものがきているか早く確かめたかった。
家の扉を開け、黒い封筒がきているか確認する。
封筒はなかった。

平凡な日々が数日過ぎた。私は刺激を求め外をぶらぶらしていた。
何か物足りない。

丁度お昼の鐘が鳴り、昼食をとるため家に帰ることにした。

マンションの入り口に入ろうとした時、視線を感じた。
視線の方を見て私は喜びに満ちた。その人物は手にナイフを持っていた。
健二がいた。私はカバンにしまってある包丁を取り出そうとしていた。
その行動を邪魔する声が聞こえた。
「君何をやっているんだ!」
二人の警官が健二へと向かっていた。
健二は逃げ、二人の警官は健二を追っていった。
もう一人ほっそりとした警官が、遅れてやってきた。
「君、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
私は心の中で舌打ちをした。なぜ邪魔をする。邪魔をするな。

数十分くらい過ぎ、健二を追っていた警官が戻ってきた。
どうやら健二は捕まらなかったようだ。


520 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:32:21 ID:hm94iRWQ0
「丁度君のマンションの周りを、巡回する回数を増やしていて良かったよ」
「なんで回数を増やす必要があるんですか?」
「念のためにね」
もしかしたら警官が私の家を調べ、封筒を持っていったのかもしれない。
「私の家に封筒が来てなかったですか?」
警官は一息つき言った。
「白い封筒と黒い封筒2通来ていたよ」
その手紙を見せてもらうためにパトカーに乗った。
白い封筒には『祝』と書かれていた。中身を見る。

1/1
僕は殺人者に幸せを与えた。
みんな幸せ。

黒い封筒の中を開け中身を見た。

1/1
幸せは簡単には与えられなかった。
殺人者は幸せがくるのを待っている。
僕も待ち遠しい。
はやく幸せになりたい。

「なんでこの手紙がきていたこと言ってくれなかったんですか」
「君の治療に良くないと思って。家族にも相談して、その方が良いと言ったんだ。隠していてすまない」
私の中の何かが冷めていく。
何故か自分が怖くなってしまった。
「帰ります」
「送っていこう」


521 :ある殺人者の話:2007/03/17(土) 18:35:56 ID:hm94iRWQ0
私は家につき、ベットに向かった。
何なんだ。健二と会ったときのあの感情は。
確かに私は健二を殺そうとしていた。
私がいなくなってしまう気がした。

大学の帰りに、久しぶりに飲みに行った。
楽しいはずの飲み会は全然楽しくなかった。
料理も酒もまずい。
「酒がまずい時は、自分自身の何かだ病んでいる証だ」
友人が笑いながら言っていた。

電車を降り家へと向かう。
階段を降りようとしたとき、後ろから押された気がした。
酔っ払って自分で落ちたのかもしれない。
あいつが突き落としたのかもしれない。
どっちでも良かった。
私は気づくと階段の一番下にいて、手にはアザができていて体中が痛かった。
近くにいたサラリーマン風な人が近づいてきた。
「大丈夫ですか?いま救急車呼びます」
「大丈夫です。ただ転んだだけです。救急車なんて大袈裟ですよ。自分で病院行くので気にしないでください」
そう言ってその場を去った。

「『ある殺人者の話』4/4」に続く

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