∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part65∧∧
『裏山の空き地』
210 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/13(火) 18:28:54.39 ID:qFVvFi5t0
友人の話。
子供の頃、実家の裏山で遊んでいると、ぽっかりと開けた空き地に出た。
立ち並んでいる木々が、なぜかそこだけは一本も生えていない。
何気なく足を踏み入れた瞬間、後ろ髪をギュッと引っ張られるような感覚を覚えた。
慌てて後頭部に手をやってみたが、どこにもおかしいところはない。
しかし気持ち悪くなったので、その場からさっさと逃げ出したという。
山を下りて帰宅すると、ひどい騒ぎになっていた。
彼は一週間近くも行方不明になっていたというのだ。
日付を教えてもらうと、確かに彼の覚えている日をとうに過ぎていた。
家族たちに大層怒られてしまったのだという。
その後、何度かあの空き地に行こうとしたが、終ぞ見つけることはできなかった。
『風呂釜』
211 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/13(火) 18:29:34.30 ID:qFVvFi5t0
知り合いの話。
彼の家は、山の中腹にある農家なのだが、過去に奇妙な事が起こっていたという。
一日の作業を終えて帰ってくると、その日家には誰も居なかった筈なのに、
風呂釜に熱い湯が張られているということが、何度となくあったのだ。
「浮浪者でも入り込んだか」とも疑ったが、風呂の中は別に汚れてはいない。
調べてみたところ、家に置いてあった薪の数も一本たりとも減ってはいなかった。
まだ便利な給湯器などが無かった時代で、一体誰がどうやって湯を沸かしたのか、それがまったくわからない。
初めの頃は気味が悪くて湯を入れ替えていたが、段々と勿体なく思うようになり、
終には湯が張ってあると、ありがたくそれに浸かるようになったという。
家をリフォームした際に給湯器を新しく設置したのだが、
残念ながらそれ以降、湯が独りでに沸くことはなくなったのだそうだ。
「灯油給湯器とはいえ、薪も使えるタイプなんだけどな。
湯張りをしていた誰かさんは、機械の類いはお気に召さなかったらしいよ」
苦笑しながら、彼はこの話をしてくれた。
『奇妙な猿』
212 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/11/13(火) 18:30:43.82 ID:qFVvFi5t0
知り合いの話。
昔、猟師をしていた頃に奇妙なことがあったらしい。
樹上に猿を見つけ、見事にこれを射貫いたのだが。
甲高い悲鳴を上げた猿は、次の瞬間、真っ白に変じた。
全身の毛の色を一瞬で失った猿は、その直後地上へ落下した。
遠耳に小さく“ガシャン!”という音が聞こえた。
ガラスか陶器が割れたような、そんな硬い音だった。
落下地点に辿り着くと、骸が何処にも見当たらない。
ただ、ガラスのようにキラキラする粉が、ぶちまけたように堆積している。
粉末の中に、歯の付いた猿の顎骨がぽつんと転がっていた。
その日はそこで山を下りたのだという。
次の記事:
『山の中の神社』
前の記事:
『峠道のバス停』