◇ 心霊ちょっといい話VER.11 ◇
941 :1:2007/06/26(火) 23:18:17 ID:6TDAqokh0
去年の今頃、ばあちゃんが死んだ。
ずっと入院生活だったし、医者からも「いつ逝ってもおかしくない」と言われてて、心の準備はできてたはずだったが、
やっぱり悲しくて、棺の中のばあちゃんの顔を見れないまま葬式進行、出棺になった。
みんなで棺に花を入れていたら、母が「あっ!お母さん紫陽花大好きだった!」といきなり叫んだ。
入れるために用意されていた花の中に紫陽花は無かった。
「好きだった花だし入れてあげよう!」となって、
私と従姉妹二人と叔父で車に乗り、あちこちの花屋に行ったが、何故だか紫陽花はどこにも売ってない。
葬式屋(?)に出棺を待ってもらっている状態だったので、遠くの花屋まで行く時間は無い。
仕方なく帰ろうとしたら、道沿いの家の庭に沢山の紫陽花が咲いてるのが見えた。
その紫陽花の横に初老の男性が立って何かしていた。
「あの人に言えば譲ってくれるかも!」と叔父が言って車を止め、全員で男性の元へ走った。
「あの」と話しかけると、男性はすっと、今切ったばかりのような綺麗な紫陽花を束で叔父に手渡した。
「ほら、早く行ってあげなさい」
そう言って笑う男性に私たちは何度も頭を下げ、急いで帰り、無事にばあちゃんの棺に紫陽花を入れる事ができた。
私も入れたが、その時初めて見たばあちゃんの顔は、安らかでまるで寝てるみたいだった。
942 :2:2007/06/26(火) 23:19:25 ID:6TDAqokh0
翌日、私たちは「お礼をしなきゃ」と、お菓子を持ってその家を訪ねた。
けど着いたら、そこ、どう見ても空き家。昨日見た時は、確かに普通の家だったのに。
屋根瓦とかはがれてるし、壁も一目見て腐ってるとわかるような状態。人の気配もしない。
でも、昨日見た紫陽花は確かにそこの庭に生えてる。近所で他に庭に紫陽花がある家は無かった。
叔父と一緒に「確かにここだったよね?」とうろうろしていたら、
従姉妹が「よそのおじいさんが、独断で譲ってくれたんかね?」と言い出した。
そうかも……と私たちは納得しかけたが、その時改めて考えてみると、
あの男性は私たちが何も言わないうちに紫陽花を渡してくれた。
いくら私たちが喪服だったからって、そんなすぐ用件がわかるだろうか?
それに、私たちが男性に話しかけた時、男性は既に手に紫陽花の束を持っていたようだった。
まるで、私たちが来るのがわかっていたように。
私も叔父も従姉妹も何となく黙ってしまい、結局空き家の玄関にお菓子を置いて帰った。
誰もいない家に何度も頭を下げて。
あれから一年経ったが、いまだに不思議。
その家とばあちゃんとの縁も見えない。
けど、あの家に住んでいた人以外の『何か』が、私たちに優しくしてくれたのかな、と思っている。
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