◇ 心霊ちょっといい話VER.11 ◇
928 :本当にあった怖い名無し:2007/06/25(月) 23:39:30 ID:mvF1OkXB0
2年前くらいの出来事。
その日、京浜東北線に乗っていた私は、大声を上げながら周りを威嚇していたおっさんに出くわした。
多分、かなり酒を飲んでいたのであろう。
パチンコで負けただの、誰それが気に入らないだの言いながら、3人分くらい占領して座っていた。
まあ、夕方の京浜東北線ではたまにある事だ。
周りの乗客も多少好奇の目を向けていたが、特に何する事もなくケータイをいじったり読書をしたりしていた。
その時の私は生後1才3ヶ月の息子を抱っこして座っていたのだが、
息子がおっさんの大声にびっくりしたのか、声をあげて泣き出してしまった。
(よしよし、大丈夫だよー)
あやしながら機嫌を直そうとするのだが、おっさんが構わずわめき続けるので、息子も一向に泣きやまなかった。
すると、おっさんはこちらに目を向け、「うるせーガキだなあーーー!」と怒鳴ってきたではないか。
まずい、からまれる!私は必死であやしたが、息子はますます激しく泣き続けていた。
それに立腹したのか、おっさんはゆっくりと席を立ちこちらに向かってこようとしていた。
本当にまずい、誰か止めてくれませんか!声は出さずに周りを見ましたが、誰も止めてくれる気配はなかった。
929 :続き:2007/06/25(月) 23:40:39 ID:mvF1OkXB0
一歩、また一歩と近づくおっさん。
「このガキィ、おめぇ、るせーんだよぉ!」
一段と声を張り上げ、私まですぐそこというところまできた。
(うぁぁ・・・・)
私は息子をぎゅうと抱きしめ、体をすくめた瞬間・・・
ドタぁ!
おっさんは目の前でつんのめって倒れていた。
あれっと思いふと見ると、横のドア付近にいたおじいさんが、杖でおっさんの足先を払ったらしい。
おじいさんは杖をトントンと1,2度床に突き、何事もなかったようにこちらに背を向けた。
しかしもちろん、これで災いが去ったわけでない。
床にひれ伏したおっさんは、わなわなと震えながら拳を握り、怒りに爆発させようとしていた。
(まずい!おじいさん逃げて!)
私のそんな思いにも関わらず、おじいさんはその場から離れようとはしなかった。
「じ、じ、じ、ジジィィィィィィーーー!」
完全に激高したおっさんは、立ち上がるやいなや右の拳を振り上げ、思いっきりおじいさんに向けて振り下ろした!
930 :続き(最後):2007/06/25(月) 23:41:30 ID:mvF1OkXB0
(あーーーーーーーーーーーーー!)
私は声も出ず見つめるだけ。もうだめだぁ!
フッ・・・
おじいさんは消えてしまった・・・
ゴンッ!ドゥイーーーーーーーーン!
「ぐあああああああああああ!!!!」
力の限り振り下ろした拳は目標を見失い、ドアの戸袋部分の角に命中した。
酒が入っていても、あれだけ叫んでもがくとは相当痛いのであろう。
おっさんは今度こそ完全にうずくまり、右手を押さえて唸っていた。
プシュー
ようやく次の駅についた。
駅についても警官や駅員は来なかったが、相変わらずおっさんはうずくまっていたので、
私はそっと駅に降り、ようやく難を逃れることができた。
あのおじいさん・・・
私には初孫を楽しみに待っていた父がいた。
3年も闘病し、結局息子の誕生半年前に逝ってしまったが、
闘病初期には体力を維持したいからと言って、杖を買ってよく散歩をしていた。
あの時見た杖が父のもののように思えた。
泣きやんだ息子が、電車にむかってバイバイをしていた。
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