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『宝探し』2/2

「『宝探し』1/2」の続き
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?87

694 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:02:01 ID:3SXxK8bF
そんな僕を見て、亮が怒りを顕わにした。
「俺が最初に見つけたんだ、俺によこせっ!!」
「そんなのおかしいよ!!実際取ったのは僕じゃないかっ!!」
僕は亮の理不尽な言い分に、心底頭にきたんだ。
だってそうでしょ?アイツは口先ばっかりでなんにもしなかったんだ。
びびって何にも出来なかったくせに、美味しいとこだけ持っていくつもりなんだ。
「実際取ったからってなんだよ…。大体ここ行こうって言ったのも俺だぞ」
普段大人しい僕が怒鳴ったりしたもんで、亮はビックリした様子だった。
でも、腕っ節に自信がある亮は、僕相手には引こうとしなかった。
あんなに怖がっていたくせにだ。
「よこせよっ!!」
亮は僕の手に握られたペンダントをむしり取ろうと、力一杯引っ張った。
嫌だと口では言わずに、僕も精一杯力を入れた。
その時、亮の左手が弧を描いた。
光の筋がパッと描かれたと思うと、僕の腕から力が抜けていた。次の瞬間、鋭い痛みが襲ってきた。
亮は隠し持っていたカッターナイフで、僕の腕を斬りつけたんだ。
「痛っ!!酷いよ…酷いよ亮ちゃん」
亮が呆然と僕を見つめていた。
「ご、ごめん…。本気じゃなかったんだよ…」


695 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:03:46 ID:3SXxK8bF
亮の目は、何処か怯えている様だった。
どうやら、チョット脅かしてやろうってくらいの気持ちだったらしい。
「でも、たっくんが悪いんだぞ。素直に渡さないからっ!!」
亮は僕の所為にした。僕は全然悪くないのに。
悲しかったけど、泣かなかった。泣いたら負けだから。
痛くて、悔しくて、情けなかった。
でもこの時、ペンダントなんてどうでもよくなったんだ。
亮は僕を傷つけてまでこれを欲しがってる。
僕はこんな物の為に、人を傷つける気なんてさらさらない。
おかしいのは亮だけど、こんな物要らない。
僕が辛い思いをしたのも、怪我したのもペンダントの所為だもの。
「いいよ…そんなに欲しいんだったら、そんな物くれてやるよ…」
僕は釈然としない所はあったものの、潔くそう言った。
「ほ、ホント?ホントにホント?」
亮は少しビックリしてる様だった。
失敗したかも知れないな。
亮が自分が悪いと思ってる今なら、何とか巧く僕の物に出来たかもしれなかった。
「いいよっ!! 何回も言わせないでよ!!」
「あ…ありがとう…」
亮はばつの悪そうな顔で、僕の目を上目遣いで見ていた。
「その代わり…。今度何か見つけたら僕にくれよ」
「うんっ、うんっ、約束するよっ!!」


696 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:04:16 ID:3SXxK8bF
亮がにっこりと笑った。
こんな約束、コイツは明日になったら忘れるんだ。
だけど僕は忘れない。そしたらその時言ってやるんだ。
あの時、ペンダントを譲ったじゃないかって。
僕に怪我させた事を、みんなにばらしてやるぞって。

その後、また奥へと向かった。
亮は上機嫌だった。
途中何度も振り返っては、僕に良い奴だの、今度おごってくれるだのと、機嫌を取っていた。
僕はそんな亮の態度を、まるで人ごとの様に流す。
僕のそんな態度に気づかない亮が、鬱陶しく思えた。
あんな事があった後だから、何もかも色あせて見えた。
蜘蛛の巣が顔にかかってもなんて事はないし、
壁に掛かった絵だって、別に動き出す訳でもない、ただの絵だ。
何もかもつまらなくなって、今はただ帰りたかった。
早く帰ってテレビが見たいなぁ。
今日の夕ご飯はなんだろうなぁ。
適当に亮の後をついて行くだけ。

すると、前を行く亮が大声を上げた。
「おぉいっ!!あった、あったぞ、お宝!!」
飛び込んできた声に、急に現実に戻された。
現金なもんだよね。でも、お宝って聞けば機嫌も治るよ。
パッと駆け出し、亮に追いつく。


697 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:05:38 ID:3SXxK8bF
「あ、駄目だよ!!気をつけて!!」
ふと足下を見ると、そこにはぽっかりと大穴が開いていた。
お宝は、その奥の壁に掛けてあった。
鈍い光を放つ、赤銅色の蛙のペンダント。
目の部分には、黒光りする石がはめ込まれていた。
黒曜石とか言うやつだろうか。
「…よかったじゃんか。ほら、お宝見つけたよ」
どう考えても、鷲と蛙じゃ釣り合いがとれそうもない。
亮もそれは判っている様だった。
鷲はちゃっかり自分の物にして、僕には蛙でお茶を濁そうって事か。
「うん…でも…」
でも、あんな蛙なんか入らない。
全然ピカピカじゃないし、目だって赤い宝石じゃないし、それに蛙だ。
僕は鷲が欲しいんだ。


698 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:06:09 ID:3SXxK8bF
「そ、そっか、あれを取るのは骨が折れそうだもんね」
亮はあからさまに話を逸らそうとしてる。
蛙がかかっている壁には、下から梯子がかかっている。
穴は大きくて、どう考えても、底に降りない限りは、梯子に手は掛からない様だ。
しかしご丁寧に、穴の手前に太いロープが置いてあった。
これで穴の底におりて、あちらの梯子を登れって事だろう。
「これは…協力しないと取れないよね」
亮が不安げに僕の顔を見る。
「そうだね」
その時の僕は、きっと無表情だったろうな。
協力?さっき僕に斬りつけたばっかりなのに?
「僕がロープをこっちで引っ張るから、たっくん取ってきなよ」
絶対そう言うと思ったね。
自分で降りるとは、絶対言わないと思っていた。
何時も嫌な事は、僕にやらせようとするんだよな。
「うん、わかったよ…。しっかり持っててよ、亮ちゃん」
僕はそう言うと、亮の顔を正面から見据えた。


699 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:06:43 ID:3SXxK8bF
「もちろんさ!!たっくんがお宝手にする番だもん」
亮がにっこりと笑った。
「ねぇ…お守りの代わりに、僕に鷲のペンダント貸してよ」
「え…い、いいけど…蛙取ったらちゃんと返してね?」
僕は鷲のペンダントを首にかけた。
それだけで勇気がわいてきて、何でも出来るように思えた。
簡単だと思った。亮の背中を押せばそれでお終いだ。
「うわぁ、高ぇ…下が全然見えないよ。ホラ、たっくんも…」
亮がこっちを振り返ろうとした時、足を滑らせた。
そう、滑らせたんだ。僕は何もしていない。
ちょっとぶつかったかもしれないけど、わざとじゃない。
ちょっと脅かしてやろうと思っただけだ。
亮がカッターナイフで僕を傷つけたように。

鈍い音が穴のそこで響いた。
亮の声は聞こえては来なかった。
兎に角早くここは離れてしまいたい。
ここを出て、早く何もかも忘れてしまいたい。
でも、このペンダントを見て、思い出さないでいられるだろうか?
暗い気持ちを見透かした様に、鷲の目が僕を見ていた。
そんな訳ないのに、ペンダントが僕を見る訳なんてないのに。

僕は恐ろしい想像が膨らまないようにと、息が切れる程思い切り走った。
出口へ。早く出口へ行かなきゃ。


700 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:07:19 ID:3SXxK8bF
出口だ!!
必死に走り、途中で何度も転んだけど、奥へと辿り着く時間の半分もかからずに、出口までやって来れた。
やっと出られる。僕は手をかけ、力一杯そのドアを開こうとした。
その時の僕の目は、血走っていたと思う。
だけど、どんなに力を込めても、そのドアが開くことは無かった。
どうやら閉じこめられてしまったらしい。
「どうしよう、亮ちゃ…」
言いかけた時、僕には頼れる相棒がいないのだと思いだした。
一人で何とかしなくては。アイツの事は忘れて…。

何度も蹴ったり、体当たりをしたり、叫んだりしてみた。
だけど、結局ドアは開かなかった。
何も考える事が出来ず、ただただ懺悔するより他なかった。
ごめんなさい、ごめんなさい、亮ちゃん。
やっぱり戻ってきてよ。こんなペンダントなんてあげるから。
神様、どうかこの僕を許してください。
そして、亮ちゃんを戻してください。
良い子になります、ちゃんと勉強もします。
ペンダントも亮ちゃんにあげます。
僕はドアに手をかけたまま、泣きながら崩れ堕ちた。


701 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:07:49 ID:3SXxK8bF
その時だった。ドアにかけた手が滑り落ちるうちに、妙な窪みにに触れたのだった。
目を凝らしその窪みを眺めると、何処かで見た形にそっくりだった。
そう。それは今僕が首にかけている、鷲のペンダントの形だった。
そうかっ!!ここにペンダントをはめ込めば良いんだ!!
神様が僕を許してくれたんだ。
ペンダントをここに置いて行けば、許してくれるんだ。
亮ちゃん…ペンダントはここに置いていくよ…。
だから、亮ちゃんも許してね。

僕はペンダントをその窪みに押し当てた。
カチリと音がした。鍵が外れたんだ。
今度こそ家に帰れるんだ。勢い良く僕はドアを開けた。
そのドアの先、僕の目の前には…ドアがあった。
愕然とした僕の目に飛び込んだのは、蛙の形をした窪みだった。
鷲と蛙。二つが揃っていないと、外には出れないんだ。
でも、蛙のペンダントはもう手に入らない。
僕一人しかいないから。
ペンダントは二つで一つ。友情の証だったんだ。

あの、鷲のペンダントを首にかけた少年は僕だった。
愚かにも、親友を裏切り、ここで息絶える事になった僕だったんだ。

僕は次にくる誰かが、無事に出られます様にと祈り、
ドアから鷲のペンダントを取ると、首にかけたんだ。

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