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『宝探し』1/2


死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?87

685 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 17:55:50 ID:3SXxK8bF
一週間も前かな?そんなに前じゃなかったかも。
兎に角暑い日だったなぁ。蝉がミンミン鳴いていて、木陰にいてもとても暑かったんだ。

「なぁ、たっくん。実は良いとこ見つけたんだ」
亮は垂れたアイスがついた指をしゃぶりながら僕に言った。
「いいとこ?」
「そっ、いいとこ。 でもさ、一人じゃ駄目なんだってさ」
亮はアイスのバーに当たりと書いてなかった事に腹を立てたのか、
バーをぼきりと折ると、思いっきり投げつけた。
「なんかさ、スッゴイお宝があるらしいんだよ。
 でもさ、絶対に二人じゃないと手に入らないんだって」
亮は僕の目を下から覗いた。
僕に一緒に行って欲しいって言っているんだ。
僕と亮はどんな時も、二人一緒だ。
喧嘩したって、次の日には笑って仲直りできるんだ。


686 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 17:56:21 ID:3SXxK8bF
「んじゃさ、僕と行こうよ」
そう言うと、亮は満面の笑みを浮かべた。
「もっちろんさ。だからたっくんにしか言ってないもん」
「よし、どうせ今日は面白いテレビもないからさ、これから行こうよ」
ホントは五時から始まるアニメが見たかったけど、
クラスメイトの誰かがきっと、ビデオにとっているはずだ。
それよりも、この好奇心そそられる冒険の事で頭が一杯だった。

「南の山の麓の森あるじゃん?そこにさ、古い洋館があるんだよ」
亮の詳しい説明によると、森の大分奥まった所に、誰も住んでいない洋館があるらしい。
南の山って言うのは、松茸だか何かが取れるとかで、一般の人は立入禁止になってるんだ。
だからここら辺の人は、絶対に入っちゃいけないことになってる。
「でもさぁ…。南の山に入ってもいいのかなぁ?」
「大丈夫、大丈夫。怒られたら俺の所為にしていいから」
亮は良くこの台詞を使う。
でも、実際亮の所為にしても、結局僕も怒られちゃうんだ。
「でも…」
「ぐずぐずしてたら、他の誰かにお宝取られちゃうよ!!」
亮がだだをこねだしたら、もう少しで怒り出すサインだ。
「わかったよ、行くよ、行く。二人じゃないと駄目なんだし」


687 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 17:56:52 ID:3SXxK8bF
森はひんやりとしていて、今日みたいな日には心地よかった。
迷いそうでちょっと心配だったけど、亮はズンズン先へと進んでいった。
亮がいるから安心だ。亮は野生児って感じだもんな。
亮は途中何度かポケットから紙屑を出すと、道ばたに落としていった。
「ねぇ、何してるの?」
「これはね、帰りに迷ったりしないように、印を残してるんだよ」
なるほど。これなら暗くなっても、これを辿れば迷わないな。

一時間も歩いただろうか。開けた所に出た。
目の前には、何とも言えない雰囲気の洋館がそびえていた。
「たっくん…、別に無理して入らなくてもいいんだぜ?」
ここまで来て何を言ってるんだろう、と思ったよ。
亮は腕っ節は強いし、青大将だって素手で捕まえられるけど、
幽霊とかお化け屋敷とか、そう言うのは大の苦手なんだ。
僕はそう言うのは全然平気。むしろ大好きさ。
「なんだよ、亮ちゃん。怖くなったのか?」
ちょっとバカにした様に言うと、亮はむきになって怒りだした。
「何言ってるんだよ!!怖いもんか!!行くぞ…」

大きな玄関前に行くと、ドアになにやら書かれている事に気づいた。


688 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 17:57:27 ID:3SXxK8bF
『二人ずつお入り下さい』
本当に二人で入らないと駄目なんだ。
実際こんな所があるなんて、ちょっと信じられない感じだった。
誰が何のためにここを用意したのか判らないけれど、入ってはいけない所で無いのは判った。
「よしっ…行くぞ、たっくん」
「うん」
ぎぃぃ。きしむような嫌な音を立ててドアが開いた。
中は森の中以上にひんやりとしていて、寒気すら感じた。
なんとも言えない埃とカビの匂いが鼻をついた。
流石の僕も、ちょっと帰りたくなった。

「暗いね…ホントにお宝あるのかなぁ?」
「た、たっくん、怖いんじゃないのか?」
今度は僕がバカにされた様な気がした。
でも本当は、亮の方が怖がっているって事はわかっていた。
「大丈夫だよ、亮ちゃんと一緒だからね」
いつもの亮に戻ってくれないと、僕も不安になってくる。
僕は亮に頼ってる様に感じさせて、亮の気持ちを盛り上げた。
それはとても上手くいった様だった。
「そうだよね。二人一緒だもんね」
亮が力強く歩き出した。


691 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:00:07 ID:3SXxK8bF
館の中は本当に薄気味悪かった。
至る所に蜘蛛の巣が張っていて、それにかかる度に、気持ち悪くて悲鳴をあげたくなった。
でも悲鳴をあげてしまえば、二人とも挫けてしまいそうだと思い、精一杯我慢したんだ。
亮も多分、同じだったと思う。
所々の壁に掛けてある絵も、何だかよくわからない絵で、
紫や赤や黒が混じったような、気持ちの悪い物だった。
僕等は出来るだけそれが目に入らないように、前だけ向いて歩いた。

途中のドアを何度か開けたけど、何も見つからなかった。
ほとんどの部屋はがらんどうで、塵と蜘蛛の巣しかなかった。
そろそろ諦め様かとしていた時、その部屋についた。
これまでの部屋と違い、そこには色んな物が置いてあった。
本棚、机、ベッド。壁には世界地図が掛かっていた。
「ねぇ、亮ちゃん。この部屋、何かあるかもよ」
興奮した口調で僕は言った。
「よしっ、お宝見つけよう!!手分けして探そうぜ」
亮は机。僕は本棚を探すことにした。
ホントは、ベッドの上に乗ってる物を調べろっていわれたけど、本棚の方が何かありそうだからと断った。
でもホントは違うんだ。ベッドの上のものは何か恐ろしげで、近づきたく無かったんだ。


692 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:00:39 ID:3SXxK8bF
二人とも黙々と調べたけど、大した物は見つからなかった。
本棚に一杯ある本も、なんだか判らない言葉で書いてあって、
大人達は喜びそうだけど、僕等にとっては何の価値も無かった。

結局部屋中調べたけど、何も見つからなかった。
残すはベッドだけだった。亮も、嫌な雰囲気がしてるのは気づいてる様だった。
ベットの上にかかった、ピカピカ光った青のベルベット。
それは奇妙に盛り上がっていて、その下に何かあるのは判っていた。

「イチニのサンで、この布を引っ張ろう」と亮が言った。
「うん。僕こっち端持つから、亮ちゃんそっち持って」
僕は逃げ出す準備をしていた。その下に何があるか、大体予想はついていた。
イチニのサン。
その瞬間、力一杯布を引くのと同時に、目を堅くつぶり顔を背けた。
亮の悲鳴が聞こえた。僕は目をつぶったまま、ドアまで駆けていた。

パニックになった亮がわぁわぁと叫ぶ。
ふと、その叫び声が止まる。次の瞬間…
「宝だ!!宝を見つけたぞっ!!」
しまった!!臆病な所を見せたばっかりに、亮に先にお宝を見つけられてしまった。
僕は勇気を振り絞ると、ベッドへと目を向けた。


693 :本当にあった怖い名無し:04/11/08 18:01:15 ID:3SXxK8bF
想像した通り、ベッドの上には死体が転がっていた。
しかし、思ったより大した事はなかったんだ。
前に何かの本でみた、ミイラみたいだった。
それはどうやら、僕等と同じ年くらいの子供の様だった。
その首にはきらきらと金色に輝き、目の部分に真っ赤な宝石が埋め込まれた、
鷲の形のペンダントがかかっていた。

「た、たっくん。あのペンダント取ってよ」
亮が震えた声で言った。亮はこう言うのが苦手だからなぁ。
でも、僕だってそんなの嫌だよ。
「亮ちゃんが見つけたんだろ?亮ちゃん取れよ」
「ふ、二人で協力しなきゃ駄目なんだよ」
確か、二人で協力しないと宝は取れないって話だったな。
でも、これなら別に一人で取っても取れるじゃないか。
よぉし、それなら僕が取って、僕の物にすればいいんだ。
僕はおもむろに手を伸ばし、鷲のペンダントを掴んだ。
その弾みで、死体の少年がこちらを向いた。
心臓が口から飛び出しそうになった。
でも、震える手で掴んだ宝は決して離さなかった。
慎重に、慎重に、死体に触れないようにそれをはぎ取った。
「やった!!やったぞ!!お宝ゲットだぜっ!!」
手にした途端、さっきの怖さなんて吹き飛んで、嬉しさ一杯になった。
高々とペンダントを掲げ、跳ね回った。
まるで、僕一人しか居ないかの様に、有頂天になってしまった。

「『宝探し』2/2」に続く

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