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『危険な好奇心』5/6

「『危険な好奇心』4/6」の続き
【携帯】連投できない人の怖い話 2投目【歓迎】

525 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/10(水) 05:18:19 ID:r7yve5IpO
俺は今日病院に来た理由、すなわち、『掃除オバさん』の事について淳に言おうと思ったが、躊躇していた。
淳はこの先、1ヵ月近く此処に入院するのに、そのような事を言うのは・・・と。
またあの時のように、原因不明のジンマシンが出るかもしれない。

すると淳が、「お前、あのおばさんの事で来たんじゃないのか?」と。
俺はとっさに「え?何が?」ととぼけたが、
淳は「そーなんだろ?やっぱり似てる・・・いや、『中年女』かもしれないんだろ?」と、真顔で詰め寄って来た。
俺はその淳の迫力におされ、「たしかに似てた・・・雰囲気は全然違うけど・・・似てる」
淳はうつむき、「やっぱり。前にも電話で言ったけど・・・」と語り始めた。


653 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/12(金) 18:32:27 ID:ywb0WCOQO
淳は少し声のトーンを下げ、
「俺が入院して二日目の夜、足と腰が痛くて痛くてなかなか眠れなかったんだ。
 寝返りもうてないし、消灯時間だったし、仕方ないから、目つむって寝る努力をしていたんだ。
 そして少し睡魔が襲ってきて、ウトウトし始めたとき、視線を感じたんだ。
 見回りの看護婦だろうと思って無視してたんだけど、
 なんか、ハァ・・・ハァ・・・って息遣いが聞こえてきて、
 何だろう?隣の患者の寝息かなぁ?って思って、薄目を開けてみたんだよ。
 そしたら、俺のベットカーテンが3㌢程開いてて、その隙間から誰かが俺を見ていたんだ。
 その目は明らかに、俺を見てニヤついてる目だったんだ。
 俺、恐くて恐くて、寝たふりしてたんだけど・・・
 そして、そのまま寝てたらしく、気付いたら朝だったんだ。

 後から考えたんだ。あのニヤついた目、どこかで見覚えが・・・そーなんだよ。
 『掃除オバさん』の目にそっくりだったんだよ!」


656 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/12(金) 18:38:25 ID:ywb0WCOQO
ニヤついた目。俺はその目を知っている!
『中年女』に、そのニヤついた目つきで見つめられた事のある俺には、すぐに淳の言う光景が浮かんだ。
更に淳は話を続けた。
「それにあの『掃除オバさん』、ゴミ回収に来た時、ふと見ると、何かやたら目が合うんだ。
 俺がパッと見ると、俺の事をやたら見ているんだ。半ニヤけで・・・」
それを聞き、俺が抱いていた疑問、『中年女』=『掃除オバさん』は確信に変わった。
やっぱりそうなんだ。社会復帰していたんだ!
缶コーヒーを握る手が少し震えた。決して寒いからでは無い。体が反応しているんだ。
あの恐怖を体が覚えているんだ・・・。


701 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/13(土) 16:00:57 ID:kgXMFP4hO
その時、俺の後方から突如、光が照らされた。
「コラ!」
振り向くと、そこには見回りをしている看護婦が立っていた。
「ちょっと淳君!どこにもいないと思ったらこんなとこに!
 消灯時間過ぎてから、勝手に出歩いちゃダメって言ってるでしょ!
 それに、お友達も面会時間はとっくに過ぎてるでしょ!」
と、かなり怒っていた。
淳は「はいはい・・・んぢゃ、また近いうちに来てくれよな!」と、看護婦に車椅子を押され病室に戻って行った。
「おぅ!とりあえず、気つけろよ!」と言った。
俺もとりあえず帰るかと思い、入って来た急患用出入口に向かった。

それにしても、夜の病院は気味が悪い。
さっきまであの女の話をしていたからか?と思って歩いていると、
ん?廊下の先に誰かがいる。
あれは・・・
『掃除オバさん』・・・?
いや、『中年女』か?
『中年女』らしき女が何かしている。


704 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/13(土) 16:07:18 ID:kgXMFP4hO
間違いない!『中年女』だ!
この先の出入口付近で何かしている!
俺はとっさに身を隠し、『中年女』の様子を伺った。
どうやら俺には気付かず、何かをしているようだ。
中腰の態勢で何かをしている。
俺は目を凝らし、しばらく観察を続けた。

何か大きな袋をゴソゴソし、もう一方に小分けしている?
尚も『中年女』はこちらに気付く様子も無く、必死で何かしている。
?ひょっとして、病院内の収拾したゴミの分別をしているのか?
(俺達の地元は、ゴミの分別がルールとなっている)
その時に後ろから、
「ちょっと、まだいたの?私も遊びじゃないんだから、いい加減にして!』と、さっきの看護婦が。
俺はドキッとし、「あ、いや、帰ります!どーも・・・」と言い、出入口に目をやると、
『中年女』はこちらに気付き、ジィーっとこちらを見ていた。


706 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/13(土) 16:09:33 ID:kgXMFP4hO
「全く!」
看護婦はそう吐き捨て、再び見回りに行った。
いや、それどころでは無い!『中年女』に見つかってしまった!
どうすればいい?
逃げるべきか?
先程の看護婦に助けを求めるべきか?
俺の頭はグルグル回転し始め、心臓は勢いを増しながら鼓動した。
俺は『中年女』から目を離せずにいると、『中年女』は俺から視線を外し、
何事も無かったように、再びゴミの分別作業をし始めた。
「え!?」
俺は躊躇した。その想定外の行動に。
俺の頭には、
『襲い掛かってくる』
『俺を見続ける』
『俺を見てニヤける』
と、相手が俺に関わる動向を見せると思っていたからである。

俺はしばらく突っ立ったまま、『中年女』を見ていたが、
黙々とゴミの分別をしていて、俺のことなど気にしていないようだった。
「何かの作戦か?」と疑ったが、俺の脳裏にもう一つの思考が浮かんだ。
『中年女』≠『掃除オバさん』?
やはり、似ているだけで別人・・・?!


708 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/13(土) 16:11:46 ID:kgXMFP4hO
俺と淳が疑心暗鬼になりすぎていたのか?!
やはり『中年女』とは赤の他人の別人なのか?
そう一人で俺が考えている間も、その女は黙々と仕事をしている。
俺は意を決して、出入口に歩き出した。すなわち、『その女』の近くに・・・

少しずつ近づいてくるが、相手は一向にこちらを見る気配が無い。
しかし、俺はその女から目を離さず歩いた。
あっという間に何事も無く、俺はその女の背後まで到達した。
女は一生懸命ゴミの分別をしている。
手にはゴム手袋をハメて、大量のゴミを『燃える』『燃えない』『ペットボトル』に分けていた。
その姿を見て俺は、やはり別人か・・・と思っていると、
その女はバッ!っとこちらを見て、「大きくなったねぇ~」と俺に話し掛けてきた。
俺は頭が真っ白になった。
大きくなったねぇ?オオキクナッタネェ?
この人は俺の過去を知っている??
この人、誰?
この人、『中年女』?
こいつ、やっぱり『中年女』!!


709 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M :2006/05/13(土) 16:14:23 ID:kgXMFP4hO
その女は作業を中断し、ゴム手袋を外しながら俺に近寄ってくる。
その表情はニコニコしていた。
俺はどんな表情をすればいい???
きっと、とてつもなく恐怖に引きつった顔をしていただろう。
女は俺の目前まで歩み寄って来て、
「立派になって・・・もう幾つになった?高校生か?」と尋ねてきた。
俺はこの女の発言の意味が判らなかった。
何なんだ?
俺をコケにしているのか?
恐怖に引きつる俺を馬鹿にしているのか?
何なんだ?
俺の反応を楽しんでいるのか?

俺が黙っていると、
「お友達も大きくなったねぇ・・・淳くん。可哀相に骨折してるけど。お兄ちゃんも気付けなあかんよ!」
と言ってきた。
もう、意味が全く解らなかった。数年前、俺達に何をしたのか忘れているのか?
俺達に恐怖のトラウマを植え付けた本人の言葉とは思えない。
女は尚もニヤニヤしながら、「もう一人いた・・・あの子、元気か?色黒の子いたやん?」
!!慎の事だ!
何なんだコイツは!
まるで久しぶりに出会った旧友のように。
普通じゃない。
わざとなのか?
何か目的があって、こんな態度を取っているのか?


898 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M :2006/05/16(火) 05:10:19 ID:RGbZkkkIO
俺は『中年女』から目を逸らさず、その動向に注意を払った。
こいつ、何言ってるのか分かってるのか?
「あの時はごめんね・・・許してくれる?」と中年女は言いながら、俺に近づいてくる。
俺は返す言葉が見つからず、ただ無言で少し後退りした。
「ほんまやったら、もっと早くあやまらなあかんかってんけど・・・」
俺は耳を疑った。
こいつ、本気で謝罪しているのか?
それとも何か企んでいるのか?
ついに『中年女』は、手を伸ばせば届く範囲にまで近づいてきた。
「三人にキチンと謝るつもりやったんやで・・・ほんまやで・・・」と言いながら、ますます近づいてくる!
もう息がかかる程の距離にまで近づいた。
あの時とは違い、俺の方が身長は20㌢程高く、体格的にも勿論勝っている。
俺は『中年女』に指一本でも触れられたら、ブッ飛ばしてやる!と考えていた。


902 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M :2006/05/16(火) 05:54:02 ID:RGbZkkkIO
『中年女』は俺を見上げるような形で、俺の目を凝視してくる。
しかし、その目からは『怨み』『憎しみ』『怒り』など感じられない。
真っ直ぐに俺の目だけを見てくる。
「あの時はどうかしててねぇ、酷い事したねぇー・・・」と、『中年女』は謝罪の言葉を並べる。
俺はもう、 その場の『緊張感』に耐えれず、ついに走りだし、その場を去った。

走ってる途中、もし追い掛けられたら・・・と後ろを振り向いたが、『中年女』の姿は無く、
ある意味拍子抜けた。
走るのを止め、立ち止まり考えた。
さっきのは、本当に本心から謝っていたのか?
俺は『中年女』を信じることが出来なかった。疑う事しか出来なかった。
まぁ、あの事件の事があるから当たり前だが。

俺は小走りで、先程の場所近くに戻ってみた。
そこには再びゴム手袋をはめ、大量のゴミの分別をする『中年女』の姿があった。
こいつ、本当に改心したのか?
必死に作業をする姿を見ると、昔の『中年女』とは思えない。
とりあえず、その日はそのまま帰宅した。


【携帯】連投できない人の怖い話 3投目【歓迎】

186 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/25(木) 09:13:15 ID:JIG/s1vbO
俺は自室のベットに横になり、一人考えた。
人間は、あそこまで変わることが出来るのか?
昔、鬼の形相でハッピー・タッチを殺し、俺を、慎を、淳を追い詰め、放火までしようとした奴が。
「ごめんね」など、心から償いの言葉を発することが出来るのか。
いや、ひょっとしてあの事件をきっかけに、俺が変わってしまったのか?
疑心暗鬼になり、他人を信じる事が出来ない、『冷たい人間』になってしまったのか?
『中年女』の謝罪の言葉を信じることで、あの事件の精神的な呪縛から解放されるのか?
もう一度『中年女』に会い、直接話すべきだ。
俺は『中年女』にもう一度会うこと、今度は逃げないこと!と決意を固め、その日は就寝した。


187 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/25(木) 09:15:28 ID:JIG/s1vbO
次の日、俺はバイトを休み病院に行った。
まずは淳の病室に入り、昨日の出来事を説明した。
そして、今日は『中年女』に会い、直接話してみるつもりだ。と言う事を伝えた。
淳は最初、「『中年女』は変わっていない!」と俺の意見に反対だったが、
「このまま一生、中年女の存在に怯え、トラウマを抱えたまま生きていくのか?」と俺が言うと、
「・・・『中年女』に会って話すんだったら、俺も付き合う・・・」と言ってくれた。


218 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/29(月) 02:59:44 ID:/lsJmPn1O
しばらく沈黙が続いた。
刻々と時間は過ぎ、面会時間終了のチャイムが鳴ると同時に、
ガラガラガラ・・・
廊下の奥の方から、ゴミ運搬台車の音が聞こえてきた。
「来たな・・・」
淳がボソッと呟いた。
俺は固唾を飲んで、部屋の扉へ視線を送った。
ガラガラガラ
台車の音が部屋の前で止まった。
部屋の扉が開いた。
作業服の『中年女』、が会釈しながら入室してきた。俺と淳はその姿を目で追った。
『中年女』は、奥のベットから順にゴミ箱のゴミを回収し始めた。
「ごくろうさん」と患者から声を掛けられ、笑顔で会釈をする中年女。
とても昔の『中年女』と同一人物とは思えない。

そしてついに、淳のベットのゴミ回収に『中年女』がやってきた。

「『危険な好奇心』6/6」に続く

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