∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part64∧∧
『蛍』
425 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/09/21(金) 19:02:35.44 ID:GPqCegi20
友人の話。
夜、畦道を自転車でのんびり走っていると、蛍が宙を漂いながら近よってきた。
淡く点滅しながら、ふわりと前籠に止まる。
その途端に、ペダルがずしりと重くなった。
まるで誰かがもう一人、車体に腰掛けたみたいに。
思わずハンドルを取られてふらついていると、蛍は籠から飛び立ち、再び宙を舞い始めた。
蛍が離れるや否や、自転車は元通り軽くなったという。
小さな光点が山奥に消えるまで、しばし呆然としていたそうだ。
『モンダミンさん』
426 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/09/21(金) 19:05:55.65 ID:GPqCegi20
アメリカで聞いた話。
山裾に作られた小さなトウモロコシ畑を歩いていた。
すると行く手の細い道上に、ひょろりとした人影が現れた。
近づいてから、それが案山子だと知る。
「何で畑の中でなく、道の上に立っているんだ?」
そう不思議に思い、側まで寄ってから指で突いてみた。
途端に案山子は全身から黄色い粒をまき散らしはじめた。
唖然としたが、案山子は粒を噴出し続けながらどんどん小さくなっていく。
あっという間に道は黄色い粒で埋まり、案山子は溶けてしまったかのようにその姿を消していたという。
道から粒をすくい上げると、それはトウモロコシのばらけた実であった。
まるで案山子が、その身をトウモロコシに変化させたような気がした。
しばらく進んだところに農夫がいたので、この話をしてみた。
「それは案山子でなく、モンダミンさんだ。
トウモロコシを人間に授けてくれたっていう精霊だよ。
お前、粗相はしなかったろうな?」
そう言われ、自分の行為が粗相に当たるのかどうかしばらく悩んだそうだ。
『神社の行事?』
427 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/09/21(金) 19:09:49.72 ID:GPqCegi20
知り合いの話。
部活で夜遅くなった帰り道、横手の小山に光が見えた。
暗い斜面の中腹がほんのりと明るくなっている。
上には古い神社があるが、そこは神主も常駐しておらず寂れていた筈だ。
「何か行事でもやっているのかな?」
好奇心を刺激されて、苔生した石段を登ってみた。
狭い境内の中にぎっしりと夜店屋台が列を成して並んでいた。
『綿菓子』や『イカ焼き』などと書かれた幟が見受けられる。
提灯が軒という軒に吊されて、黄色い光を発していた。
下から見えた光源はこれだったらしい。
不思議なことに、人の姿は何処にも確認出来なかった。
シンと静まり返った中で、金魚すくいのポンプだけがコポコポという小さな音を響かせている。
夜店の列の間を境内の中央まで進んでみたが、人の姿はなかった。
「誰か居ませんか?」と呼ばわっても、何の返事もない。
どうにも気味が悪くなって、そこで引き返したのだという。
最後に石段の下から見上げてみたが、黄色い明かりには変化がなかった。
翌日、日が高くなってから神社を再訪してみた。
地面にはふかふかと落ち葉が積もり、店を建てたような痕跡などない。
人に話してみてが、「夢でも見たんだろ」と相手にされなかったそうだ。
次の記事:
『ばく』
前の記事:
『川の畔』