∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part62∧∧
785 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/06/27(水) 21:59:04.14 ID:gaM7O2jj0
知り合いの話。
単独で山を縦走していた、ある夜のこと。
テントの外、焚き火の側で煙草を吸っていると、誰かが声を掛けてきた。
「済まないが、煙草を一本分けてくれないか?」
見れば、坊主頭で作業服姿の男性が一人、こちらへと近づいてくる。
「いいですよ」と懐から箱を取り出し、一本抜いて分けてやる。
中年に見える男性は頻りに恐縮しながら、美味しそうに煙を吹き上げた。
やがて礼を述べると、男は闇の中へ戻って行った。
「こんな夜中に、何処から来たんだろ?」
気にはなったが考えてもわからず、そのまま寝ることにした。
翌朝目覚めると、荷物の中から煙草が失くなっていた。
それも、彼が昨晩男に見せた箱の中の煙草だけ。
半分以上は残っていた筈なのに。
他に仕舞っていた煙草は無事だったので、やはりあの坊主頭が犯人に思えた。
しかし、どうやって盗ったのかがわからない。
そんな暇は与えてないのだが。
786 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/06/27(水) 21:59:58.94 ID:gaM7O2jj0
山を下りて、麓の軽食屋で昼食を食べている時、この体験を愚痴ってみた。
すると店の小母さんが、奇妙なことを口にし始める。
あの中年男は人ではないというのだ。
「ここいら辺の山にはね、煙管坊って物の怪が住んでいるんだ。
まぁ正体は狐だって言われてるけどね。
煙草が大好きで、里に下りてくるようになったのも、それが原因だとか。
夜中にやって来ては、樵や炭焼きに煙草をねだるんだとサ。
声掛けられた時に実はもう化かされていて、既に何本か抜かれてるんだって」
「ちぇっ、分けてやるんじゃなかったな」そうボヤくと、
「いや、分けてやらなかった場合は、これが根こそぎ持って行くってサ。
ちゃんと分けてやったから、それだけで済んだんだと思うよ」
「物の怪の癖に、煙草の煙が好きなんて、非常識だよな」
彼は何度もそうボヤきながら、私にこの話を聞かせてくれた。
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