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『洋室にある人形』


不可解な体験、謎な話~enigma~ Part81

718 :本当にあった怖い名無し:2012/05/25(金) 08:47:14.09 ID:AaAQrj3C0
それ程恐くも不思議でもないが、我が家の洋室で起こった話。

我が家には客間とは名ばかりの洋室がある。
来客は多いが、みんなリビングに通してしまうので、洋室に通されるのは家庭訪問時の教師くらいだった。
そうなると必然的に物置代わりになるもので、
古い本やレコード、存在を忘れられたワインやウイスキーなんかが並ぶようになった。
その一角に、十数体の人形が保管されている戸棚がある。
戸棚の中は人形が隙間なく飾られていて、入り切らなかったのか3体ほど戸棚の上に置かれていた。
人形は祖父母が国内旅行の際、現地で買ってきたものばかりだ。
例えば、青森で購入したらしき、ねぶた祭の人形。
沖縄の琉球舞踊人形、徳島の阿波踊り人形…日本全国津々浦々のお土産が並んでいる。
みんなきらびやかな衣装を纏っているので、子供の頃はよく友人や従姉妹とのお人形遊びに担ぎ出された。

人形遊びから始まり、私はよく洋室に入り浸るようになった。
テレビを見たりゲームをしたり、勉強もここですると捗った。
友達も呼んで、毎週ワイワイ遊んだりゲームをした。
私にとってリビングよりも思い出が詰まった部屋だ。


719 :本当にあった怖い名無し:2012/05/25(金) 08:53:25.51 ID:AaAQrj3C0
ある日、いつもの如くゲームをしていると、斜め後ろ方向から視線を感じた。
ふと目を向けると、棚の上に置かれていた3体の人形が全員一方向を見ている。視線の先はテレビ画面だった。
何となく違和感を覚えたので、3体とも中の人形と同じ向きに変えた。
後日、テレビを見ている最中にふと見てみると、また人形は3体揃ってテレビをみている。
その後何度か向きを変えたつもりなのだが、人形はいつもテレビを見ていた。
何となく、テレビを見ていたいんだなと察し、そのままテレビ方向に向けたままにすることにした。

時は流れ大人になり、あまり洋室に篭ることもなくなったが、人形は相変わらずテレビ方向を見ていた。
そんなある日、『世にも奇妙な物語』が放映された。
家族が見たい番組と重なっていたため、久々に洋室でテレビを見ることにした。
この日の放送は内容までは覚えていないのだが、巨大な生首が出てきた。
天井にまで届くほど大きな、黒ずんだ坊主の生首。
この手のドラマにはあまり動じない私だが、さすがにこの生首は気味が悪かったのを覚えている。


720 :本当にあった怖い名無し:2012/05/25(金) 09:01:49.45 ID:AaAQrj3C0
そしてクライマックス、主演女優が生首に取り込まれて死んで?しまい、ストーリーは終了。
ホラー特有の演出にやや放心気味だったが、CMが流れ始めてやっと我に返った。
ドラマも終わったことだし、テレビを消してソファーを立とうとしたその瞬間、
振り向きざまに、あるはずのないものが目に飛び込んできた。
ソファーの背後には書棚があり、並んだ分厚い本の手前にそれはあった。
生首を両手で抱えた、首無しの阿波踊り人形であった。
恐らく経年劣化で首がこそげ落ちてしまったのだろうが、
阿波踊りを踊る手にうまい具合に首が乗っかり、顔はこちらを向いていた…
しかし入室時にこんなものがあったか?そもそも戸棚の中にあったはずの人形がなぜここに?
様々な思考が脳内を駆け巡りしばし硬直してしまったのだが、早くこの場を離れた方がいいと察知しリビングへ戻った。
人間、想定外の状況に出くわすと、案外冷静になるものだとこの時知った。

持ち主である祖母に事情を話すと、「ど~れ?」と腰を上げよたよたと洋室へ向かった。
細かい事は気にしない性格の祖母は、人形を見るや否やさっさと持ち出し、そのままごみ箱へ棄ててしまった。
とにかく不気味だったのでホッとしたのだが、
今思えば、きちんと修理をしてまた飾ってあげれば良かった、という気持ちもある。

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