釣り場の怖い話 パート2
504 : : 2005/06/16(木) 02:39:27
去年の8月、ダチと2人でアルミ(※アルミボート)引いて、ハチローへ行ったんですよ。4日間の予定で。
ところが、到着前日から凄い雨で、流入河川とか濁流なんですわ。
初日、西部やったんですけどいまいちで、2日目から中央カンセンロとかいう、ドブみたいな所でやったんですよ。
小雨の肌寒い中で一日中やって、そこそこ釣れました。
夕方帰ろうとした時、川の真ん中に人が立っているのが見えたんですよ。
200mくらい先に、ぼんやりと。
夕方で結構肌寒いし、釣りとか網とかやっている風でもなく、棒みたいに突っ立っているんですよね。
505 : : 2005/06/16(木) 02:54:10
ダチと「なんか気味悪りぃなー」とか言いながら、なるべく避けて端を通るようにボートを走らせていたんですよ。
「やべぇぞ!」
前に座っていたダチが言いながら止めろと、手で合図をしてくるんですよ。
何だ?と思って見ると、さっきの突っ立っているヤツが、
その時点でグレーっぽい作業服を着ている男のように見えました、
そいつが、まっすぐお風呂に入るみたいに沈んでいくんですよ。
自殺なのか?それとも何かしていて倒れたのか?助けなきゃ!面倒な事になった・・・
いろいろな考えが頭の中をグルグルと回りました。
507 : : 2005/06/16(木) 03:08:45
全開で近づいていく中、その男はもう胸くらいまで水に浸かっていました。
50mくらいまで近づき、こちらに背を向けた男らしい事が分かりました。
やばい、急げ!
「おいっ、アンタ!シッカリしろ!」
ダチが叫んでいました。
沈んでいく男は無反応でした。
・・・あれっ?・・・・・ココって、そんなに深かったっけ?
次の瞬間、サササ・・・とペラ(※プロペラ)に砂が当り、エンジンがストップしました。
508 : : 2005/06/16(木) 03:21:44
全然浅いんですよ、そこら一帯。
行きは岸寄りを釣りしながら流していたんで、
そこら一帯がサンドバー(※砂が体積して岬状になった場所。中州)になっているのに気付きませんでしたが。
とりあえず、エンジンを上げて、エレキ(ボートを推進させる道具)を少し水に突っ込んで、
男が沈んだ場所へ近づきました。
「待て!止めろ!!」
「何で?」
「ちょっと、おかしいよ。離れた方がいい・・・」
振り返ったダチの顔は、血の気が引いてました。
「そうだな、そうしよう。」
ホラー映画なら、ここでエンジンがかからないのが定番ですよね。
その通り。さっきまで動いていたエレキが全く反応しないんですよ。
594 : 504 : 2005/06/17(金) 00:55:21
ほんの一瞬顔を見合わせたり、今いる所の底を見たりしている間に、
男は沈んだのか、消えたのか、いなくなっていました。
怖くて、しっかりとその辺りを見たり、周りを探したりは出来なかったです。
ダチが焦りながらオールで底を押して、その場からボートを離すようにしたんですよ。
俺は、少しでも深い所に出たら、速攻エンジン下げてかける準備をしました。
濁った水の底が見えなくなってきたところで、慌ててエンジンをかけました。
かかれ、かかれ、頼むから、かかってくれ。
後で見たら手の皮がむけていましたが、スターターを力いっぱい引っ張りました。
595 : 504 : 2005/06/17(金) 01:12:31
意外にも一発でエンジンはかかりました。
「やったー!早く、このクサレどぶ川から脱出しようぜ」
ダチが強がっていましたが、顔面蒼白でした。もちろん俺もです。
行きに通ったラインにボートを戻して、全開で走りました。
男がいた場所を通りすぎる時、ダチはじっとその辺りを見ていましたが、俺は怖くて見れませんでしたよ。
とにかく、全開で走り続けました。
ボートを下ろした場所と自分の車が見えてきて、助かったと思いました。
「なぁ、アレ、やばいヤツだよなー?まさか、ホントに人だったなんてことは無いよな」
「当たり前だろ、ペラが底につく浅さだぜ、人間じゃねぇよ」
「おー、でも、初めて見たぜ、ホンモン」
そんな軽口を少しは叩けるくらいにまで落ち着いてきました。
596 : 504 : 2005/06/17(金) 01:26:50
少し冷静になって、気がつきました。
朝より少し減水してるようです。
「ちょっと減水してっから、ボート上げるのキツイぞ」
「とっとと上げて、帰ろうぜ」
その日、トレーラーを使えそうな所が無くて、比較的段差の無い所からズリ降ろしたんですよ。
ボートを岸に近づけて、急いで装備を車に投げ込みました。
その間、川の方はなるべく見ないようにしてました。
特に男がいた辺りは、絶対に。
598 : 504 : 2005/06/17(金) 01:56:05
軽くなったボートの先を岸に引っ張り上げて流されないようにして、さあ、後はタックルを積むだけ。
ガシャ、ガシャ・・・
「あっ、チッキショー!ボックス、ぶちまけたー!あれっ?・・・」
「ナニ、やってんだよ、早く拾えよ!」
「割れてる、こんなにでっかく・・・」
「えっ・・・」
ダチのプラノ(※収納ボックス)を見ました。
取手と留具の部分に、何ヶ所もひびが入っていました。
「・・・なんだ、こりゃ・・・」
多分、俺もダチも同じことを考えていたと思います。
でも、お互い口に出しませんでしたよ。
何かが始まったり、来たりするような気がして。
599 : 504 : 2005/06/17(金) 02:11:09
2人とも無言で散らばったルアーかき集めて、車に投げ入れました。
いったい、俺たちが何をしたって?
昼間、他にも釣りをしていたヤツはいたじゃないか。
もしも、俺たちが何か間違えたのなら、勘弁してくれ。頼むから。
でも、駄目でした。
601 : 504 : 2005/06/17(金) 02:38:00
ボートを上げようとして、車から川の方に振り返ると、俺のボートのすぐ脇にあの男がいました。
多分、俺が立ったら、ひざ位しかない水深の所です。
胸の辺りまで水に浸かって、上流のさっき沈んでいった方に向いていました。
俺とダチは凍り付いて動けなかったです。
男がゆっくりと斜め上に浮き上がりました。変な動き方でしたよ。
次の瞬間、ポンって感じで男が俺のボートに乗りました。
足が途中で切れていて、何て言って言ったら良いか、木が生えているようにボートにくっついてました。
603 : 504 : 2005/06/17(金) 02:50:44
「もうー、ボートいらねぇや」
声が出ていたかは分かりません。
俺とダチは車に飛び乗って、そこから逃げました。
走って、走って、とりあえずサンルーラル(※ホテル)まで来て、
駐車場にメチャクチャな停め方をして、レストランに入りました。
ビールを頼んで、二人で顔を見合わせました。
「もう、ボート無くなってもいいや。あそこには戻れねぇよ」
「あぁ、お前には悪いけど、俺も無理だ」
その夜は電気、テレビをつけっぱにして寝ましたよ。
605 : 504 : 2005/06/17(金) 02:58:18
次の朝、やっぱりボートが惜しくなって、戻ってみました。
ボートは昨日の場所にちゃんとありましたよ。
昨日の夜、レストランからくすねた塩をボートにまきました。
トレーラーに乗せて、宿の予定をキャンセルして、そのまま帰りました。
なんとなく気持ちが悪いので、そのボートは売っちゃいましたよ。
どこのショップかは言えませんけどね・・・。
次の記事:
『バイト帰り』
前の記事:
『忌み言葉』