∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part55∧∧
234 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2011/06/16(木) 19:20:34.94 ID:su66lpZA0
友人の話。
幼い頃、山中の実家へ遊びに行った時のこと。
祖父と一緒に庭で竹馬に挑戦していると、不意に背後で異音がした。
べしゃりっ
振り向いてみたが、何も黒土の上には確認できなかった。
気を取り直して竹馬に取り組み直したが、しばらくするとまた同じ音が聞こえた。
何度も聞こえると流石に無視出来なくなり、祖父に「変な音がする」と訴えた。
「ありゃよく熟れた柿が落ちる音だ。心配要らん。
お前は聞いたことがないから知らんだろうが、儂には懐かしい音でな」
祖父はあっさりとそう答えた。
235 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2011/06/16(木) 19:21:52.64 ID:su66lpZA0
そして庭の一角を指し示す。
「ほら、あすこに切り株があるだろう。
昔はでかい柿の木が生えていたんだ。
虫や病でボロボロになったんでな、何年か前に切り倒したんだよ。
でも何故かそれからも、柿の実が落ちる音だけは聞こえ続けてる。
柿の季節でもないのに音がするところを見ると、柿も迷っているのかもな」
迷っているって?
「成仏できてないってことだ。
耳がないから、ありがたい御経も届かんのかもしれん」
成人した今でも時々、べしゃりっという音を聞くと彼は言っていた。
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