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『物音がする廃屋』


∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part24∧∧

113 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/12/26(月) 00:35:41 ID:pH0vvhn30
後輩の話。

幼い頃に里帰りした時のこと。
久しぶりに会う幼馴染みたちと遊べるのが、何よりの楽しみだったという。
誰かが「お化け屋敷に行こうぜ」と言い出し、そういう運びになった。

その廃屋は山を少し入った場所にあり、一軒だけ孤立していた。
地元組みが言うには、人が住まなくなってから大分経つのに、時折家事をする音など聞こえてくるのだそうだ。
とは言え悪童どものこと、誰も本気で幽霊を信じてはいなかった。
廃屋に入り込むと、気の済むまで大っぴらに探索しまくったらしい。

彼らが二階の奥を探っていると、一人が不意に立ち止まった。
何かがキュッキュッと擦れているような音が聞こえたというのだ。
皆で耳を澄ませると、確かに微かな物音が届いてくる。
音がどこからするのかわかった時、皆揃って泣きそうな顔になった。
彼らが登ってきた階段の真下、丁度そこら辺りから聞こえてくるのだ。

じゃんけんで負けた彼が先頭になり、おっかなびっくり下を覗き込む。
人の姿はない。ただ、一枚のくたびれた古雑巾が見えた。
虫を思わせるような動作で、独りでに床の上を這い回っている。
「あ」
急に理解が訪れる。
悪ガキたちが残した土足の跡を、一生懸命拭き取っているのだ。

見ているうち、怖いという思いは消え失せ、申し訳ないという気持ちで一杯になった。
その場で靴を脱ぎ、ゆっくりと階段を下りる。
「ごめんなさい」
皆でそう謝ってから廃屋を出た。
雑巾は彼らに目も振らず、ただひたすら自分の仕事をしていたという。

中学に上がる前に、その廃屋は取り壊された。
「あの雑巾、どうしたのかなぁ」と、里帰りの度に思い出すのだそうだ。

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