じわじわ来る怖い話25じわ目
836 :本当にあった怖い名無し:2009/08/03(月) 12:18:26 ID:wenda2Wp0
「神様がいるなんて、あなたも信じていないわよね?」
彼女の問い掛けに、僕は肯いた。
世の中に宗教はたくさんあって、その数だけ神様がいることになっている。
けれど神様や天国、または地獄なんて概念は、
生きている人間を慰めたり戒めたりするために、誰かが作った物に過ぎない。
「だったらお坊さんが唱えるお経だって、意味なんか無いわよね?」
僕は今度も肯いた。
神様がいないなら、人間の創作物である経文に、超神秘的な力が宿るはずも無い。
あれは故人の霊をあの世へと送り届けるためではなく、あくまで遺族の悲しみを鎮めるために読まれる物だ。
「じゃあ、この世を彷徨う魂は、どうしたら成仏できるのかしら?」
なるほど。宗教家が行う浄霊儀式なんかに意味が無いとすれば、現世に留まる霊はどうしたら成仏させられるのだろう。
僕は彼女に言った。
「生前に熱心な信仰があれば、お経を読んでもらうことで、成仏できるのかもしれないね」
信心深かった故人なら、お坊さんの読むお経にありがたみを感じて、安らかに眠る事が出来るのかもしれないと、
僕は思った。
「そう……そうかもね……」
それきり彼女は俯いて、黙り込んでしまった。
僕はひしゃげたままのガードレールに花束を手向けて、その場を後にした。
次の記事:
『拾った女』
前の記事:
『潔癖症の男』