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『陰陽師の友人~その3』

陰陽師の友人シリーズ。
不可解な体験、謎な話~enigma~ Part53

392 :本当にあった怖い名無し:2009/05/27(水) 16:46:41 ID:zX6G6d6OO
俺がまだ学生で、実家でスネかじっていた頃の話。
微妙にスレ違いかと思うんだが、怖くもない話だし。
でも未だに俺自身、心霊的な物とやらを、頭っから肯定出来る程に出来た人間でもないと言う事で、
出来ればここで話させてくれたらと思う。

まだ俺が不良学生だった頃のある冬に、父親が倒れた。
俺は知らなかったが、しばらく前から不調は訴えてはいたらしい。
病院で母親が聞いて来た話をまた聞きした所だと、珍しい血管の病気だった。
よく聞く血栓とか梗塞とかではなく、バカな俺ではどんな病気なのかさっぱり解らなかった。
足の付け根部分を入り口に、細いワイヤー?(失念した)を血管に通し、
それを頭部まで行かせて、なんとかかんとかと言う手術をする事になり、
命に関わると言われた。
勿論助かるのを祈ったが、最悪の事態も覚悟して、これからの事とか色々考えた。

ある日煮詰まった俺はそんなこんなを、大学で知り合った友人の1人に相談してみることにした。
同期だけど凄く落ち着いて世間知のある奴で、
俺の頭じゃ考えつかないような、いいアドバイスを貰えるんじゃ無いかと思ったんだ。


393 :392:2009/05/27(水) 16:51:53 ID:zX6G6d6OO
学校から駅までの帰り道に友人に話した。
「大変だな」とか「大丈夫さ」とか、普通に相づちを噛ませながら話を聞いていた友人だったが、
途中から無口になってきて、
ちょっと顔を覗くと、何だか難しい顔をしている。
友人に相談するにはヘビーな話題だったのか?と思ってたら、
突然「今からお前んち行っていい?」と言い出した。
帰り道でもないのに、真剣に相談に乗ってくれるつもりなんだとじんとした。
ただ、俺んちに着いた時の、そいつの値踏みするみたいに家を眺め渡した行為が、
意外と言うか不似合いと言うか、ちょっとむっとしたけど。

「大学辞めたらどうなるか」とか、「辞めないで済むには」とか、そんな縁起でも無い話をしてる間も、
やっぱりそいつは難しい顔をして、言葉が少ない。
何か言いにくい事を、言うか言うまいか悩んでる風。
「もう何でも言ってくれよ。俺も色々覚悟決めなきゃならんし。
 こんな暗い話、他の奴らにホイホイ相談も出来ないし、お前のアドバイスが聞きたいんだ」
とか何とか言った。

それでもまだ言いあぐねたから、何回か促して、それからやっとソイツは話し出した。
「お父さんは、生き霊に、憑かれてる」
ゆっくり、切る様に言った


394 :392:2009/05/27(水) 16:58:24 ID:zX6G6d6OO
「・・・はぁ!?」
一体全体コイツは何を言い出したんだ?
そっちよりの人だったの?とか聞いたと思う。
冗談じゃないんだよこっちは、とか笑いながら。
「俺も冗談じゃないよ。
 言う必要ないから黙ってたけど………実は俺、陰陽師なんだよ。
 つか、俺んちが代々そうなんだ』
さすがの俺も、怒るか笑うか決めかねて黙ってたら。
「ま、信じなくてもいいよ。でも、もし俺が親父さん助けてあげられるかも知れないなら、どうする?」
「そりゃ助けてくれって言うさ。でも」
「解った」

話は遮られたが、俄かに信じられる訳もなし、好奇心やらなんやらで、根掘り葉掘りしようとした。
しかし、そいつの行動は早かった。
立ち上がるなり部屋を出て、ザックの中から、
白い枯れ葉みたいな物や、塩や、水らしき物、パワーストーンみたいのや、コンパスやら、
他にも何なのかもよく分からない色々なもの取り出しては、家の中を歩き回った。
短刀まであってびっくりした。
俺もついては出たが、友人は初めて来た家のはずなのに、
説明も聞かずに歩き回り、意味の解らない行動を取り続ける。
目が痛いほど枯れ葉を燃やしてみたり、お札みたいな物を書いて貼ったり。
俺は今夢みてるんじゃないかな?とか思っていた。


396 :392:2009/05/27(水) 17:05:28 ID:zX6G6d6OO
家の外周にも何か一回り施して、また何かを小さく唱え、終わったようだった。
その間返事もしなかったので、やっと「今何をしてたの?」と聞いたら、
「家の中浄化して、今出来るので一番強い結界を張らせて貰った。次は親父さんに会わせて」

俺もまだ何といっていいものか解らないし、
俺に輪をかけて頭の固い父親に、する話が話だしで
何かもじもじにやにやしながら友人を紹介。
「陰陽師なんだって」と言う前に、すぐに俺は友人に病室から追い出された。


398 :本当にあった怖い名無し:2009/05/27(水) 17:16:58 ID:zX6G6d6OO
その部屋でオヤジと友人が交わした話は、友人の方から後で聞かされた。
友「オヤジさんは、確かに今生きている人間から何らかの強い恨みを買っていて、
 そいつの憎悪の念で、今の原因不明(医者にもそう言われた)の病気で、
 抜き差しならない所に来ているようだ。

 しかも結構長い期間、この生き霊のアタックにあってる。
 随分前から具合は悪かったと思われるんだ。
 仕事が巧く行かないとか、そういう事も含めて。

 生き霊の持ち主は多分、自分がオヤジさんの元に、生き霊飛ばしてるなんて知らないと思う。
 すごく恨んでいるのは間違いないけど、マイナスの念の暴走とでも言えばいいかな。

 もう怒鳴られるの覚悟で『心あたりありますよね』と聞いたよ。
 最初は、俺がこんな若造(当時友人23歳・俺21歳)だし、息子の友達だし、
 何をバカなって笑われたんだけど、
 『心あたりはありますよね?』と聞いたら、だまっちゃったから、やっぱり何かあったみたいだね」

俺「……それ、女だよね」
友「なんで?」
俺「中坊ん時親父に誘われた水族館で、親父の会社の女に会った事がある。
 そん時は解らなくて、年取ってきて理解が行ったけど、あれは不倫相手だよな。
 女の方は連れもいなかったし」

友人はそれにはもう答えなかったし、親父とどんな話をしたかも語らなかったが、
俺にとってはそれが返事となった。


400 :392:2009/05/27(水) 17:20:54 ID:zX6G6d6OO
とっくに物心ついた子供に、偶然を装いながらも合わせる程深い間柄だった2人が、
その後何かの事情で別れた。
決して若くはなく、はっきり言えば母親より冴えなかったと記憶している女が、
父親を殺しかねない程に恨むには、充分な理由だっただろう。
母親は知っていたのだろうか。
これは未だに、どちらにも聞いた事は無い。

俺「随分前からアタック受けてるって話だけど、
 生き霊の本人は長い間父親を恨んでて、今も恨みの塊で、幸せじゃ無いって事なんだね」
友「そうとは限らない。生き霊って結構簡単に飛ぶんだ。
 昔の友達とかを、『あいつどうしてるかな』って思い出したりしただけとかでも、人によっては飛ぶ位。
 講義受けながら学食の事考えたら、学食に飛んでたとかね」
俺「嘘くせー。俺は今、冗談が通じる心理状態じゃねーぞ?(笑)」
友「それに…一度生まれた物は、簡単に無くなったり出来ない」

結果から言うと、親父の手術は成功し、心を入れ替えたかの様に日頃の摂生を敢行、
定年も無事迎え、今は楽々隠居の有閑老人だ。


401 :本当にあった怖い名無し:2009/05/27(水) 17:24:55 ID:zX6G6d6OO
友人はあの時病室で、父親の病室にも浄化と結界を施し、
後日、父親専用の式神入りの、自分で磨きだして作ると言う、
勾玉型のパワーストーンで出来た御守りなる物を渡し、
俺経由で、家族それぞれにも同じ仕様の物をくれ、扱いを教えた。
それぞれ石も違い、封入されている式神も違うらしい。
男共のには女性の式神が、女共のには火鳥の様な存在の式神だそうだ。
(形の似ている鳥はいるが、実際には存在しない。手塚治虫のとは違う)

母親は子供を産んでいるので、ただの御守りしか作れないとか謎発言もあったが、
名前を2つつけ、例え家族でも恋人でも、裏の名前は人に話してはけない事。
大それた事は出来ないが、何かお願いをする時はその名前で呼ぶ事。
時々は式神本体をイメージし存在を信じる事。
その他も制約は色々あるし、正直自分含め家族も信じているのか疑わしいが、
今も全員常に携帯しているのだから、我が家もいい加減と言えばいい加減。
迷信と言われる事にまで信心深さを発揮する土地柄、と言えばそれなのかも知れない。

友人の思わぬカミングアウトが、一家を救ってくれたのかも知れない。
友人とうちの家族の付き合いの、最初のエピソードでした。
長くなったけど、読んだ人いたらありがとう。


407 :本当にあった怖い名無し:2009/05/27(水) 19:33:22 ID:XVReVB3a0
まとめサイトにある『陰陽師の友人』の陰陽師と同一人物だったりしてその人


415 :392:2009/05/27(水) 22:29:07 ID:zX6G6d6OO
暇々につらつらとまとめてたら、存外に長くなってしまって、読む人に申し訳無かったです。
>>392の友人と、まとめの中の陰陽師の友人は同一人物。
今回もボンクラな、語り手も同じなんでw

スレ違いに優しいレス、ありがとうございました。

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