「『霊道』1/2」の続き
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?88
622 :7-4:04/11/25 20:35:52 ID:Tza1tZ76
「目隠し取るぞ」とCが言って、タオルが外された。
暗い、何本かのロウソク。まるであの時の、Bの部屋のようだった。
上を見ると、かなり高い天井から、何本かのロープがぶら下がっている。
部屋の四隅にもロープやお札。
目が馴れず上手く見えないので、目を細めてジッと見つめようとすると、「こんばんは」と低い声。
見ると、誰かが自分の前方に座っている。
見た目はヤクザ。
その人は立ち上がりAに近付いて、「そのまま」と、
Aの目を親指でアカンベーするように、目の下の皮を引っ張った。
そしてAの目をジッと見た後、「可哀想になぁ、今迄つらかったろ、よく頑張ったな」と優しく言った。
心身とも疲れていたAは、その言葉を聞いてボロボロと泣いてしまった。
「うん、それでいい。
とりあえず、無理に泣き止もうとせんで、力を抜いて感情に身をまかせりゃええでな」
と、Aが泣き止む迄ジッと待っていた。
Aが泣き止むと、
「息子から大体の事は聞いたが、君の言葉でもう一度、その時の状況を事細かに教えてくれんかね?」
というので、Aはそれに答えた。
するとその人は、
「やはりな。お前さんに憑いとる霊は、ここにいてはいけない霊だでな、
それはなあ、いわゆる自縛霊というもので、本来は人で無く場所に憑く霊なんだよ。
だが君の友人があるやり方したもんで、
自縛霊を憑いていた場所から引き剥がして、君の体を霊の憑く場所にしてしまったんだ。
今から引き剥がすで、力抜いてそのままでな」
と、Aの後ろに回って、砂のようなものを首に擦り付けた。
その後、お経のようなものを唱えながら、シャンシャンと鈴の様なものを鳴らしはじめた。
Aの体は一定の間隔で、ブルルッ、ブルルッ、と震えたそうだ。
その内頭がクラクラし、意識がもうろうとする。
最後に体が立ち上がる程ブルルルッと震え、何かが自分の体から抜けて行った。
その後、そのまま車に乗せられて帰る事に。
頭はボーッとしたままだ。だが今度は目隠しは無し。
「悪かったな、目隠ししちまって。
あーゆーのはさ、場所とかの先入観無い方が成功しやすいからさ」
と、遠くで聞こえるCの声を聞きながら、Aは眠ってしまった。
623 :7-5:04/11/25 20:40:56 ID:Tza1tZ76
気が付くと家の前。Cに起こされ目が覚めた。外はすっかり夜になっている。
Cは「今日は俺が一緒に泊まるよ」と、デカイ荷物と共にAの家に上がり込んだ。
そして家の中をウロウロした後、Aの家の見取り図を紙に書いて、
「FAXある?」と聞いたので「無い」と答えると、「それじゃあ」とCはコンビニへ行き、FAXをした。
AはCに、「何が始るの?俺はもう大丈夫なんだよね?」と聞くとCは、
「まだ終わって無いよ。きっとその内引き剥がされた霊が、お前の所に戻って来る可能性がある。
これからその対策をするのだ」と答える。
するとCの携帯に電話が。どうやらCの父かららしい。
CはAの家の見取り図を見ながら、
「うん・・・そう、そっちが北ね。ああ、やっぱりこのルートね」と、ひとしきり喋った後電話を切り、
「今から、帰って来る霊を追い返す処置をするから手伝ってくれ。
あ・・・鏡が無いや。Aの家って、全身が映る鏡ある?」
「いや、無いよ」
「じゃ、買いに行くぞ」
そして、近くのロヂャースで全身が映る姿見を買い、家に帰る。
Aの家の見取り図を見せて、
「お前の家のここ。ここが霊道になってるのよ。
霊道ってのはさ、もしお前の家に霊がやって来るとすんだろ?
その場合、霊が通る場所ってのがあるんだよ。それが霊道ね。
いまからその道に障害物とかを置いて、通行止めにするんだよ」
どうやらA宅の霊道は、玄関から入り真直ぐ廊下を突き抜けて、外に出るルートらしい。
「最良のルートだ」とCは言った。
そして、持って来た荷物の中から色々取り出した。
廊下の端に、祭壇の様なものと日本酒の入ったコップ。廊下を塞ぐような形で姿見を置いた。
何でもこうする事により、玄関から入って来た霊に、鏡に映った自分を見て死んでいる事を気付かせる。
また、鏡には色んなものを反射する力があるので、
鏡にぶつかった霊は、鏡に跳ね返されて戻って行ってしまうらしい。
「これを何日か続ければ、霊は消えるか他の場所に行ってしまう」とCは言う。
624 :7-6:04/11/25 20:42:50 ID:Tza1tZ76
その夜、Cは色んな事を教えてくれた。
Aを連れて行った場所がCの実家で、Aの除霊をしてくれたのがCの父であった事。
Bの家は安易な行動の為に、関係ない霊までが集まってしまっているのだが、
恐らく間違った結界を貼ってしまった為に、霊達があの場所から出るに出れない状況。
それに耐えられず、Bはあの家にいられなくなった。または、死んでいるだろうと。
結局、その夜は何も起らなかった。Aは久しぶりにまともに眠れた。
次に日、Aにお礼を言われたCはそのまま仕事に行き、Aはバイトに行った。
その際Cは、いくつかAに注意をしていった。
「日本酒は毎日取り替える事」
「鏡は出来れば動かさない事。特に夜は、絶対にあの場所に置いておく事」
「出来れば塩も盛っておく事」等。
その事をAはキチンと守った。
そして何日後の夜、Aはある物音で目が覚めた。
耳をすまして聞くと、ミシッ、ミシッ、と何者かが廊下を歩いている。
帰って来やがった!
そう思いジッとしていると、「ガン、ガシャーン!」と、何かが落ちる音が。
「うわー」と震えていると、何時の間にか物音は消えてしまった。
朝廊下に出てみると、廊下の脇に置いてある洗濯機の上の物が、廊下に散らばっていた。
その日、AとCはファミレスで会う。
Aが昨晩の事を話すと、「ああ、そりゃあ、霊の奴がムシャクシャしてやったんだよ」
Cは笑いながら言った。
「やな霊だな、オイ」
「ま、そんだけ効果があるって事だからね。出来るだけ廊下付近には、余計な物置かないこった」
とCは言って帰っていった。
さっそく廊下付近の物を無くした。
625 :7-7:04/11/25 20:45:31 ID:Tza1tZ76
やがて廊下を歩く音にも馴れ、朝起きて夜ぐっすり眠るという普通の生活を取り戻し、
ついに霊は現れなくなった。
CもAの家に来て、「これならもう大丈夫。御苦労様でした」と、事件の終わりを告げた。
しかし、こうなると気掛かりなのはBの行方。
Cに聞いても、「別に知ったこっちゃ無ぇんじゃね?まあ、死んだ所で自業自得だしな」
と、全然気にしていない。
まあ、CとBは直接会った事も無いので、そんなもんなんだろう。
数日後、AとBの共通の友人Dから、Bの事を聞いた。
Cの言う通り、Bはあの後すぐ実家に帰って、そこで暮らしていたそうだ。
その数日後の夜、2階の部屋で寝ていたBを、Bの父が包丁でメッタ突きにして殺してしまったそうだ。
その後、父は2階から飛び下りて骨を骨折。しかも、その時の事は覚えて無いらしい。
ただ、奥さんの話だと、その夜は何か父の様子がおかしかったそうだ。
「この世ではない物に腕を舐められた」と、訳のわからん事を言っていたそうだ。
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