不可解な体験、謎な話~enigma~ Part46
565 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 17:55:08 ID:hDkhLAN/0
父が昔社長してたが、俺が高2のときに潰れて一気にド貧乏に転落。
「学費分は寄せてあるから心配するな」とは言われてたんだけど、
たいした額じゃないってことがわかって、専門に進んだ。
早く社会に出て家計を助けてやろう、という考えがあったもんで。
上京してからの住まいは、半分物置と化しているようなところ。
大家が空き部屋に、産業廃棄物みたいなものを溜め込んでいたので、俺以外に住んでいる人はいなかった。
ただ安いからというだけで、そこに住むことにした。まるで小屋。
不動産屋も同情して、礼金はいらないと言ってくれた。
バイトも一生懸命やってた。バイト先でいわゆるチャラ男がいた。
チャラ男とあと2人に、バイト帰りに誘われて飲みに行ったとき、
チャラ男が「俺、実は恵子ちゃんとつきあってんだ」と言い出した。
恵子ちゃんってのは同じバイトの子で、その時に俺が惚れていた子。
真面目で純情な感じで、ルックスはまあまあ。菅野美穂っぽかった。
金貯めて引っ越したら、告白しようと考えていた子だった。
チャラ男の話によると、先月に社員の送別会があって、
その帰りに方向が一緒だったチャラ男と恵子ちゃんが、同じタクシーに乗った際に、
「うちでコーヒーでも飲みませんか」ということで恵子ちゃん宅へ招かれて、そのままセックル。
みんなで驚いていたら、チャラ男が調子に乗ってペラペラ話し出して、
ヤルとどんな感じになるとか、フェラがうまいとかゲスな話満載。
俺は目の前が一瞬真っ暗、頭の中は真っ白。血圧下がるし。
平静を装っていたけども、ゲス話で想像しちゃって吐き気を催して退席。
566 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 17:56:24 ID:hDkhLAN/0
真っ白人間の状態で自宅の最寄り駅着いてから、
「ああ、あんな小屋に帰りたくねえなあ」なんて思って、気晴らしにふらふら散歩してた。
でも気なんか晴れない。
普段来ないようなところまで歩いてきてしまって、
とりあえず自販機で缶ビール数本買って、こども公園で座った。
そんなときって、何かのせいにしないとやってられないもんで、
「あーオヤジが会社倒産しなきゃ、まともな生活してたのに」とか、
そんなことばっか考えてヤケ酒してた。(たかがビールですが)
「普通の学生は楽しそうなのに、なんで俺は小屋みたいなとこ住んで、バイトたくさんして貯金してんだろ。
楽しくねえよ」
とかいろいろ一人で愚痴ってたら、なんだか悲しくなってきて、いつのまにか嗚咽を押し殺すので精一杯だった。
そのときに子どもの声で「泣いてるの」と聞こえ、声の方向を見た。
ベンチの斜め後ろの木のあたり(だったと思う)に、5歳くらいの女の子が立ってた。
「どうしたの?」って言うの。
そんで俺びっくりして泣きやんで、「一人でいるの?」って聞いた。
女の子、しばらくして、「泣かないで、だいじょぶだよ」って。
それだけ言って、暗闇にすーっと消えていった。正直、怖くなった。
ただ「すぐ近所の子か」と思って、追いかけることはしなかった。
そのへんの地域知らないし。江戸川区の下町だし。
その直後、むわーんと香水みたいないい匂いがした。
俺の周囲に誰もいないようなので、なんだこれ?と思ったんだけど、それどころじゃなくて必死にクンクンした。
癒された。
匂いって自分のツボがあるんだけど、ドンぴしゃで気分がよかった。
匂いがなくなってから正気に戻った。何してんだろ俺、って。
やらなきゃいけない学校の課題とかを思い出して、すぐ帰宅した。
567 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 17:58:01 ID:hDkhLAN/0
それからバイト先では、恵子ちゃんがやめてしまった。
チャラ男が「つきあってるのしゃべっちゃった」と言ったら即。
そのへんの事情は聞いてないけど、恵子ちゃんも察したかと。
俺は無事に学校を出て、就職をして結婚もした。娘も生まれた。
ついこの間。盆休みの帰省前に、幼稚園の娘と嫁さんと横浜へ行った。
嫁さんと横浜に来たのが結婚前以来のことだったので、
普段は淡々としてる夫婦の時間が戻ったような気がした。
なんとなく嬉しくなってしまい、1泊することにした。
先にチェックインだけして、またいろいろとうろつくことにした。
夕方、公園で小休憩してアイス食べてたとき、風が強くて目にほこりが入ったからゴシゴシやってた。
そしたら娘が「お父さん泣いてるの」って、心配して声かけてきた。
「目にほこり入っちゃったんだよ」って俺が言うと、
「泣かないで、だいじょぶだよ」と言って、テケテケとかけていった。
なんだっけこれ、この感覚。不思議な感じ。
と思って、それからしばらく考えてたんだけど、ホテルに戻る直前で、
「ああああキタこれ。あのときの子どもじゃねえか」と。
顔覚えてないけど、ほぼ同じシチュエーションだった。
その不思議を説明するのもめんどくさいから、
嫁さんがホテルの食事に行くので着替えてる間に、1人でほくそえんでた。
娘のことがいつもよりも可愛く思えて、激しくかまってた。
568 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 17:59:46 ID:hDkhLAN/0
2人でキャッキャして遊んでたら、準備が終わった嫁さんが「2人で楽しそうじゃないのー」と出てきた。
そしたら、香水の匂いがむわーんと。
「おまえ香水つけてんの?普段つけてないだろ?何の香水?」と聞いたら、
「さっき私、雑貨屋で買ってたの見てなかったの?
お父さん、○ちゃんのことばっか見てるんだよねー」と娘に言った。
さっきのこともあって、すぐに、あのときの匂い?と思った。
それで俺は、完全にテンションが上がってしまったんだけど、
やっぱり説明するのもめんどくさいし、嫁さんオカルト嫌いだし。
お化け屋敷すら入れない人なので、食事の席では話さなかった。
ただいつもより、嫁さんと娘が新鮮に見えたのだけは確かだった。
その翌日、うちの実家に帰省したときに、酔っぱらった勢いでそのことを話したんだけど。
何のことやら理解してなかった。
うっかり誘導尋問にはまり、「菅野美穂に似てた」というのだけは、やたらとケチをつけられた。
俺のかつてのアイドルなんだが。
15年越しの出来事なんだけど、単に思い過ごしかもしれないけど、
自分に都合よく思っててもいいよな、これ。
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