「『六年一組』1/2」の続き
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?75
468 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:39 ID:UwaIQTbL
その日、岩本は当直だった。この小学校は当時、教員が交代で当直を担当していたのである。
岩本は、本日に行われたテストの採点を行っていた。
「阿部・・・75点と・・・ん?」
白紙の答案用紙があった。しかし、裏面に赤い文字で何か記されている事が分かった。
「なんだ?」
岩本は答案を裏返すと息を呑んだ。
そこには血文字で、こう書かれていたのである。
『みんなころしてやる』
「これは血文字?内木め、悪ふざけしおって!明日は灸をすえてやらねばならんな」
やがて校内見回りの時間となったため、岩本は懐中電灯を片手に校内を回った。
見回りを始めてしばらく経ったころ、ある一室から物音が聞こえた。
ゴトリ・・・
「なんだ?」
岩本はその一室に入っていった。理科準備室である。
準備室に入ると、何故か岩本の持つ懐中電灯は消えてしまった。
スイッチを何度押しても点灯しない。
やむなく彼は、愛用のジッポライターを着火した。
ボッ
「うわ!」
少し明るくなった室内で岩本が見たもの。それはヒトの形をした人形だった。
「な、なんだ。人体標本か・・・驚かせやがって・・・」
そう岩本が安堵したその直後だった。
469 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:40 ID:UwaIQTbL
ガターン!!
一つの首吊り死体が、岩本の背後に落ちてきた!
太いロープで自らの首を絞め、ぶら下がる死体であった。
「げぇ!内木!!」
岩本は驚きのあまり、思わず持っていたジッポライターを手放してしまった。
ライターは床にポチャンと落ちた。何かの液体がまかれていたようである。灯油だった。
ボォン!!
「ウギャアアアア!!」
理科準備室は火の海となり、翌日、内木と岩本の黒コゲの死体が見つかった。
理科準備室からは、それから不思議な声が聞こえだした。
「ころしてやる・・・みんなころしてやる・・・」
牧村のクラスでは当然、その話が噂となる。
休み時間、牧村はクラスメイトとヒソヒソとその話をしていた。
「おい牧村、知っているか?理科準備室から、内木の声が聞こえるらしいぞ」
「うん・・・」
「『ころしてやる・・・』とか言っているそうだぜ・・・オレたち呪い殺されるのかな」
準備室から内木の声で『ころしてやる』と聞いたのは、一人や二人ではない。一組の人間が何人も聞いていた。
いじめていたのは全員。牧村も例外ではない。
いつ自分が教師の岩本のように殺されてしまうのか、たまらない恐怖であった。
470 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:41 ID:UwaIQTbL
「バカヤロウ!お前ら何言っているんだ!」
牧村たちの話に蛭田が入ってきた。彼も少なからず怯えの表情が見える。
「こ、腰抜けは死んだって腰抜けだ。何もできやしねえよ。ハッハハハ」
「ん?」
牧村には蛭田の首に何かが見えた。
「な、何だ?」
目を凝らして見つめると、それはロープだった。
しかし、蛭田も周りもそのロープに気づかない。牧村にしか見えないのだ。
ロープは蛭田の首に巻かれ、その端末は上に伸びている。
そしてその端末を握っていた者。不気味な笑みを浮かべて、ロープを握っていた者。
内木だった。
「うわあ!」
牧村はその光景を見るや、脱兎のごとく教室から出て行った。
寒くもないのに歯がガチガチと震え、恐怖のあまり失禁もしていた。
そしてその日、蛭田は下校中に四トントラックにはねられ、即死した。
理科準備室からは、まだ内木の声がかすかに聞こえていた。
ころしてやる・・・みんなころしてやる・・・
クラスの誰もが口には出さずとも、思っていた。次に殺されるとしたらアイツらだ、と。
蛭田の子分だった二人の少年、高橋と中村。
二人は朝から怯えた表情をしていた。
彼らも蛭田が死んだのを見て、内木の復讐の呪いがどれだけ恐ろしいかを知った。
今度ころされるのは自分たちだ。
彼らの冷や汗は止まる事はなかった。
そして牧村には再び見えたのだ。高橋、中村の首にロープが巻かれているのを。
そのロープを、笑みさえ浮かべて握る内木の姿を。
そしてその日、高橋はグラウンド整備用のローラーに巻き込まれて即死。
中村は清掃の時間中、三階の窓を拭いているときに転落し、死亡した。
471 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:42 ID:UwaIQTbL
牧村は翌日から学校へ行かなかった。
自分の部屋に閉じこもり、出ようとしなかった。
(次はボクだ!次はボクなんだろう!内木くん!)
布団の中でブルブルと震える牧村。死の恐怖に押しつぶされそうだった。
(あの時、『知りません』と言ったのは謝るよ!ごめん!だから助けて!ボクをころさないでよ内木くん!!)
しかし、蛭田、そしてその子分の高橋と中村が死んでから、理科準備室から内木の声は聞こえなくなった。
また、死者も出ず、内木の自殺から異様な雰囲気であった六年一組の教室に、静けさが戻りつつあった。
牧村も落ち着きを取り戻し、内木の復讐の呪いは終わったのだと解釈し、再び学校に登校した。
この日は遠足である。集合場所でもある一組の教室に牧村は久しぶりに入った。
今までの不登校の負い目を拭い去るかのように、牧村は元気良く教室のドアを開けた。
「みんな、おはよう!」
クラスメイトたちは、久しぶりに登校してきた牧村を温かく迎えた。
牧村が内木の復讐を恐れているのは誰もが知っている。
「よう牧村、久しぶり!」
「何よ、牧村くん、少し太ったんじゃない?」
472 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:43 ID:UwaIQTbL
クラスメイトの反応にホッとしつつ、牧村は背負っていたリュックを降ろした。
クラスメイトたちは遠足の期待に浮かれ、バスの到着を今か今かと待ちわびていた。
だが、牧村にはまた見えてしまった。
クラスメイト一人一人、全員の首にロープが巻かれている。
女子も例外ではない。全員にである。
誰一人、そのロープに気づかない。牧村にしか見えないのだ。
クラス全員の首にロープを束にして持っている者。それは内木だった。
「う、内木くん・・・」
空中に浮かぶようにして、内木の姿がある。ロープの束を持ち、笑う内木の顔がある。
これから自分をイジメぬいた者たちを皆殺しに出来る喜びか、内木の顔は喜色満面である。
内木は牧村を見ない。クラスメイトたちの首に巻いたロープを、嬉しそうに見つめているだけだ。
牧村は自分の首にもロープがあるかを見た。牧村の首にロープは無い。
しかし彼は狂ったかのように、首からロープを取り払うべく暴れだした。
「う、う、うわあああ!!」
突如に暴れだした牧村に、クラスメイトたちはあっけに取られた。
「牧村、どうしたんだよ?」
首に内木のロープが巻かれていると知らない牧村の友は、怪訝そうに牧村に詰め寄った。
その言葉に、牧村が顔を上げたときである。
その友の背後には、まだロープの束を持ち笑っている内木が牧村を見ていた。
牧村と内木の目が合ったのである。
「ギャアアア!!」
牧村はリュックも置きっぱなしで、教室を飛び出していった。
恐怖のあまり涙は流れ、小便と大便が垂れ流しであった。
牧村は半狂乱状態で家に駆けた。
まだ終わっていなかった。内木の復讐は終わっていなかったのである。
474 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:44 ID:UwaIQTbL
その日、六年一組を乗せたバスは、山の側道を走行中にガードレールを突き破り、谷底に落下した。
運転手、バスガイド、そして六年一組全員が死亡した。
ついに、牧村以外は全員死んでしまったのである。
牧村は怯えた。
「次はボクだ・・・次はボクだ・・・内木くんは最後にボクを殺す気なんだ・・・」
内木の復讐に怯える日々を牧村は送った。
いっそ自分も死んだら楽になれる、と考えたほどである。
しかし彼は、自分で死ぬことが出来なかった。
そして十年・・・
牧村はその後、無事に小学校を卒業し中学、高校と進んでいった。
もはや彼の頭の中にも、内木の存在は徐々に薄れてきていた。
牧村は現在二十二歳となっていた。
そんな彼の元に、一通の不思議な手紙が来た。
牧村はその手紙を見て愕然とした。
『六年一組同窓会のお知らせ』
「そ、そんなバカな!」
牧村がそう思うのは無理も無かった。六年一組で生きているのは彼だけである。あとは全員が死んでいるのだ。
その彼の元に、どうして同窓会の通知が来るのか。
しかし、彼は同窓会の会場に向かった。
牧村には、この同窓会の知らせを無視する事が出来なかった。
何かに手招きでもされるかのように、牧村は会場へと歩いた。
会場は、かつて牧村が通った小学校。
忌まわしい思い出ばかりのこの小学校へ、牧村は卒業後一切近寄らなかった。
しかし今、牧村は再び校門をくぐった。
時間は深夜0時。同窓会を行う時間としては適当ではない。それでも牧村は行った。
季節は寒い冬。牧村はコートの襟を立て、白い息を吐きながら、会場の教室へと歩いた。
カツーンカツーン。深夜の校内に牧村の靴音が冷たく響いた。
475 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/06/12 15:45 ID:UwaIQTbL
やがて牧村は見つけた。『六年一組同窓会会場』と案内の紙が貼られた扉を。
牧村はドアのノブを握った。ドアの向こうはシーンとしている。誰の気配も感じられない。
ギイ~
牧村は会場に入った。
このとき牧村は気づいていないが、ドアに『六年一組同窓会会場』と貼ってあった紙。
それが牧村が室内に入ると同時に剥がれ落ちた。
その紙はくるりと半回転して床に落ちた。
それはかつての答案用紙。あの日、内木が自らの血で書いた文字が書かれている紙だった。
『みんなころしてやる』
会場、そこはかつて内木が首吊り自殺を行った、理科準備室であった。
室内は暗い。同窓会などやってはいない。
牧村は暗闇の中、ただ立っていた。
そして徐々に見えてきた。
まるで綱引きにでも用いられる太いロープ。その端末は輪状となって結ばれている。
それが天井からぶら下がっている。
その輪の向こう、うっすらと人影が見えてきた。
牧村を見て、不気味に笑う者。
「待っていたよ・・・牧村くん・・・きみのロープだ・・・」
「うわあああああ!!」
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