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『ミケ猫』

師匠シリーズと同じ作者。
死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?36

696 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/07 01:24
飼ってる猫が人間には見えないものを見つめていたりして、オオッと思うことありませんか?
僕の小学校の頃飼ってた猫が特にそうで、よく何もない壁だとか天井だとかを睨みつけていました。

ミケという名前の三毛猫でしたが、もらい猫だったので避妊が遅れて、
獣医に連れて行った時には、もうお腹に赤ちゃんがいるということでした。
可哀相でしたが、まだ潰せるということなので御願いしました。

去勢されたあとのミケは、空気が抜けたように元気がありませんでした。
ご飯に呼んでも上の空で、目もどこかうつろでした。
しばらくはしかたないと、家族はさばさばしていましたが、
僕は幼かったのでミケに感情移入し、彼女が心配でなりませんでした。

そして、よく気をつけて見ていたある夜、僕はコタツのしたにうずくまっていたミケが、
何かを懸命に舐めているのを見たのです。


697 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/07 01:24
僕もコタツに潜りこんでみると、それは赤い肉の塊のように見えました。
しかし、ミケが唸って威嚇したので、慌てて顔を引っ込めました。
そしてもう一度そっと覗いてみると、今度は自分の毛繕いをしており、肉のような物も何も見当たりませんでした。
僕はその夜、寝ながら思いました。
あれはきっと、産まれてくるはずだったミケの赤ん坊なのだろう。
ミケはお母さんになりたかったんだなあ、と。

次の朝目が覚めると、僕は一番にミケの所に行きました。
するとミケは、また赤い物を舐めています。
それはそれは、いとおしそうに舐めているのです。
「ミケ。ミケ。ゴメンな。ゴメンな」
僕は涙がこぼれて止まりませんでした。
それはいつのまに食いちぎったのか、毛がすっかり抜け落ちたミケの尾先でした。

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